魔族動く
「「お邪魔します」」
ちょうど俺たちは、闘技場からゴートさんの家に辿り着いていた。
「あれ?1人暮らしなのですか?」
「アイラっ!」
「えっ?」
「ナオヤ、いいんじゃよ」
状況を教えられていないアイラは、首を傾げていた。
時間は、闘技場へと遡る。
俺は、ゴートさんにこれまでのことを話した。
「なるほどのぉ。それは大変じゃったろうに。実はわしもな…」
そこから先の話は、とても衝撃的なものだった。
「わしはこう見えて、昔はS級冒険者だったんじゃ。その日もいつもどおり依頼を受けていた。そのときじゃ、突然緊急依頼が入ったのは。ギルドも人が足りておらんくてのぉ、わしもその依頼を受けることになったんじゃ、その依頼は『街に攻めてきた魔王を退けること』だった。当然魔王は強い。しかし、わしらは善戦し無事退けることに成功したのじゃ。だが、その戦いでわしは魔王に目をつけられてのぉ。妻が殺されてしまった。妻の亡骸のそばには、『邪魔をしたら、もっと大勢の人が死ぬことになる』と書かれた紙があったのじゃ。それからわしは、ずっと監視されておるのじゃ。余計なことをさせないためにな」
「そうだったんですか…」
俺は返す言葉が見つからなかった。
そして現在に至る。
『マスター、先ほどの戦闘のとき闘技場内から僅かに魔力を検知しました。もしかしたら、その男が監視しているのかもしれません』
『なんだって!…だが、倒したところでまた別のやつが来るよな。先に魔王を倒さないといけないか…』
『ですがマスター。魔王を倒すにも場所が分かりません』
『シスでも分からないか…。とりあえず街で聞き込みを行うしかないか』
俺たちの旅の目的は決まった。
魔王の野郎、絶対倒す。
「とりあえず食事にしようか。アイラちゃんもお腹空いているだろう?」
「えっ?私は…」
「そうですね。アイラも待ちきれないようなので、さっそくご馳走させていただきます」
「もぉ、ナオヤまで…」
俺がそう答えたとき、隣ではアイラが頬を膨らませていた。
うん、可愛い。
「たくさん食べなさい」
しばらくアイラと談笑をしていると、目の前にはゴートさんが作った料理が並んでいた。
「料理上手なんですね」
「私より上手…」
「…アイラは頑張って練習すればいいよ。俺も協力はするからね」
「ナオヤ、ありがとう!」
「それより、早く食べないと料理が冷めちゃうよ」
「そうだね。ゴートさん頂きます」
「慌てて食べんでも料理は逃げんぞ」
「もぉっ!」
「「はっはっは」」
こうして俺たちは、ゴートさんの家で賑やかな食事を楽しんでいた。
ちなみに、今後一緒に旅を続けるつもりなので、アイラの敬語はやめてもらった。
そして場所は魔王城へと変わる。
「魔王様、ただいま戻りました」
「お前が戻ってきたってことは…、あの街に何かあったのか?」
「実は…」
男は、自分が見てきたことを魔王に伝える。
「うむ、ゴートと引き分けたか…」
「いかがなされますか?」
「そうだな、一応その少年にも監視をつけるか。リリー来なさい」
「お父さん呼んだー?」
「リリー様!」
「いい加減、お父さんと呼べるのをやめろ」
「いいじゃない、お父さんなんだし」
「だからやめろと…。っとそうじゃない。お前も大分修練してきたようだし、初仕事を与えよう」
「本当に!」
「あぁ、ゴートと引き分けたという少年の監視を頼む」
「えぇー、監視かぁ」
「我が侭言わずに行ってこい。S級冒険者と戦って引き分けたのだぞ?相手の強さも分からないんだ。慎重に行動しなさい」
「はーい」
「よし。では、お前が案内しろ」
「はっ!」
リリーはどこか不服そうな返事を返すと、男と一緒にナオヤたちがいる街へと移動した。
『マスター、敵の反応を探知しました』
「なんだって!」
そう言って布団から飛び出す。
『こちらに向かってきています』
俺は、マップで敵の位置を確認する。
「2人組みか。しかも早いな」
『そうですね。どうしますか?』
「とりあえず、ここを出て草原に行くか。草原まで転移することってできるか?」
『可能です』
「それじゃ、『転移』」
「あれっ?少年の反応が移動した」
「そうみたいですね。ここからは私はゴートの監視に戻るので、リリー様はその少年を追ってください」
「はーい」
相変わらずのんきな声を出しながら、リリーは少年の下へと移動した。
「ここだったらゴートさんを巻き込まずに済むだろう。ん?一人はゴートさんのほうに行ったな。そいつがゴートさんを監視しているやつか?」
『そうみたいですね』
「洗脳とかってできるのか?」
『可能ですよ』
「それじゃ、そいつは後で洗脳するか」
『ただ、女性には使用できませんよ。私が制限をかけるので』
「そ、そんなこと考えてないし」
『ふーん』
「なんだよ。っと来たな」
『みたいですね』
上空を見ると、遠くのほうから翼を生やした少女がこちらへ飛んできているのが見えた。
その少女が俺の近くに来たと思ったら、…下降を始めてそのまま木の中に消えていった。
「えっ?」
『どうしたんですかね?』
「とりあえず…。『監獄(プリズン)』」
俺は、その少女を捕まえることにした。
「ちょっと何よこれ!」
少女は、あっさりと俺たちに捕まったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます