魔物との戦闘?


『マスターが全力で走れば一瞬で街に着くのですが…』

『さすがに全力で走ったら能力のことに気付いちゃうもんな』


そんなわけで、いま俺たちは街に向かって歩いていた。


「あと、3日ほどで着くと思います」


3日か…。まだ、そんなにかかるのか。いっそのことばらしちゃおうか。


『それは危険です。マスターの能力はこの世界では天災級の強さなので、バレたら国同士の争いの火種になるでしょう』


はぁ、強すぎるのも困ったものだな。俺ってやつは、なんて罪な男なんだ。


『マスター、キモいです』


うん。シスの罵倒がどんどん酷くなっていくな。

そして、相変わらずデレない。

そんなことを考えていると、マップに反応があった。


「青か…」


そう言って、反応があったほうを見つめる。

シスから聞いたのだが、一点を集中して見ると心眼と言う能力が自動で発動するらしい。

それによって、遠くの目標なども見ることができる。

おぉ、イノシシ発見。


『あれはイノシシではありません。ボアーという魔物です』

『魔物か…。美味いのか?』

『美味いです』


決定。ボアー倒す。そして、食べる。

思い立ったらすぐ行動。

俺は、ボアーがいる地点へと移動を始めた。


「ナオヤ、街は逆方向ですよ?」


アイラにそう言われる。ちなみにさん付けはよそよそしいので、はずしてもらった。


「あぁ、ちょっとあっちの方向に人影が見えたものでな」

「人ですか?」


どうやら、盗賊に襲われたときの恐怖がまだ残っているらしく、警戒しているようだった。


「大丈夫、何かあったら俺が守ってやるから」


そう言って、ボアーがいる方向へと歩き始める。

数分後。


「あれは…、魔物じゃないですか?」

「そうみたいだな」


能力がバレないように、今気付いたかのように振舞う。


『ワザとらしいですね』

『うるさい』

「おっ、あれはボアーじゃないか!」


シスにツッコまれながらも、演技を続ける。


「えっ?私にはまだよく見えません。ナオヤは目がいいんですね」


…見えすぎるのも困るな。話すたびにボロがでるんだが…。

そんなことを考えているうちにボアーがこちらに気付いたようで、マップの表示が青から赤に変わっていた。

そして、こちらに向かって勢いよく突進してきた。


「いただきまーす」


俺は合掌をしたのちに、ナイフを構える。


「ていっ」

「ブヒッ」


一瞬にして、ボアーは倒されたのだった。

えっ?いつナイフを持ったのかって?今作って手に装備したんだがなにか?


「やっぱり、ナオヤは強いですね。ボアーを一撃で倒すなんて」

「まぁ、昔から訓練していたからな」


適当な嘘を言って誤魔化す。


『神様からもらったチートのおかげじゃないですか』


知らない。聞こえない。


「さてと…『どうやって食べるんだ?』」

『……』

『…すみませんでした。教えて下さい』

『焼けば大抵なんとかなります』

『答えが雑になってきてませんか?』

『気のせいですよ』

「…よし、焼いて食うか」


そう言って、ボアーを解体し始める。


「解体が上手ですね」

「あぁ、昔村で教わったからな」

『嘘ですね。能力のおかげじゃないですか』


実は解体と言う能力を使っていたためなのだが。

そして、相変わらずシスにツッコまれる。


「よし、焼き始めるぞ『燃えろ』」


俺は詠唱を唱える。


ボッ


目の前の集めた木々が燃え始める。


「いいかんじに焼けてきたな」

「そうですね」

「ではでは…。うん、美味い!」

「私も…。おいしい!」


アイラもつられて食べ始める。どうやら好評だったようだ。焼いただけだが…。

次は塩とか使って料理したいな。

そんなことを考えながらも、俺たちは時間を忘れて肉を食べ続けた。


「余ったな」

「余ったね」


そして…、目の前には食べきれなかったボアー肉が山積みになっていた。

どうしようか…。捨てるのはもったいないしな。


『バッグに収納すればいいんじゃないですか?』

『さすがに生肉は腐るだろ』

『腐りませんよ。バッグの中の時間は私の意思で管理できるので、生肉だけ時間を止めてしまいます』

『えっ。そんなこともできたのか?』

『楽勝です。私を敬ってください』

『それじゃぁ、お願いするぞ』

『……』

『すみません。シスさんお願いします』

『分かりました。そのままバッグに入れてください』


俺は言われたままにバッグに肉を入れた。

山積みになった肉は全部バッグに収めることができた。


『これは捨てますね』

『えっ?』


そう言って、シスはボアーの睾丸を捨てる。


『ちょっとまって…。って遅かったか』

『変なものを入れないでくださいね。ガンター』

『ちょっと!さすがに睾丸とマスターはあわせて欲しくなかったぞ』

『そんなことしてませんよ。ガンター』

『うん、してるね。現在進行形で言ってるよね』

『言ってません』

「ガンターがどうしたんですか?」

「ガンター言うな!」

「「……」」

『いきなり怒鳴るなんて最低ですね』

『うるさい…』

「ごめんアイラ、ちょっと意思疎通でいろいろ言われてね」

「…あっ、そういうことか。それならよかった」


どうやら声に出していたようだ。

本当にアイラには申し訳ないな…、あとで何か買ってあげよう。

そんな危ない大人のような考えをしているナオヤだった。

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