第3章 夢と迷宮の狭間 (3)眼差し

 その日最後の決裁案件を終わらせると、大足はすぐに国守館に戻った。工房での仕事が長引いていなければ、あの娘はちゃんと来ているはずだ。馬を佐久太に引き渡し、正殿に向かう。

 部屋には既に木葉が座っていた。けれども、初めて一人で屋敷に入ったものだから、落ち着きがなくきょろきょろと辺りを見回していた。

「待たせてすまなかったね」

「あ、いえ、どうも……」

 木葉は首だけぴょこんと曲げて挨拶をした。改めて一対一で顔を合わせるとなんとなく恥ずかしいような緊張するような気がする。

「ご馳走様でした。お腹空いてたから出されたもの食べちゃった。国司になるといつもこんなたくさん食べてるの?」

 きっと空腹だろうと考えた大足が、厨女に頼んで用意させた膳の皿はきれいになくなっている。白米と汁物と小さな焼き魚と漬け物という質素な食事だが、木葉にとってはまさしくご馳走なのである。

「気に入ってもらえてよかった。たぶんこの食事は、他の国司からすると少ないだろうな。でも、君からすると贅沢だ」

「私の夫や赤ちゃんもこれくらい食べてれば、病気で死ぬことはなかったんだわ」

 嫁ぎ先の相馬郡も生まれ故郷の葛飾郡も、食うことに満足したことがないのは同じだった。自分たちが食べる分を、国司や郡司やその家族に分け与えてやってるようなものだ。それなのに、何か見返りがあるかと言えばそうではない。

「でも、大足さんなら許してあげる。ちゃんと食べてたくさん働いてもらって、私たちに生きる意味を返してもらわなきゃいけないから」

 相当失礼な言い分であったが、大足は咎めることなく、

「肝に銘じるよ。さて、早速だが、始めようか」

 と言って、抱えてきた風呂敷を床の上で広げた。中には大量の木簡がしまわれていた。そのうち五本を選んで取り出し、膳を下げた卓子の上に広げる。

「これに医学のことが書いてあるの? ていうか、大足さん、医学を学んだの?」

「いや、医学を勉強する前に、君は文字を覚えて書けるようにならないといけないよ。朝廷での女医は口頭によって博士から学ぶんだが、それでは後で必要な時に書が読めないし、私は君にただ技術を習得するだけの女医になってほしくない。女医は役人でもある。役人は文字を書き、文章を書くのが仕事だ」

 大足は力説したが、正直に言うと本葉は落胆した。すぐにでも医術を学びたいと意気込んでいたからだ。まずは文字を覚えるところから始まるなんて想定外だ。

 木葉の目の前に、筆と硯、そして小刀が置かれた。もちろん目にしたことはあるが、実際に自分が使ってみることになるとは思ってもいなかった。

「じゃあ、この木簡の文字をこっちの何も書いていない方の木簡に真似して書いてみて」

 硯には墨が満たされていて、木葉は筆の先をそっと墨に浸けた。ちょっと滴っているようなので、硯にこすりつけて落とす。木葉は恐る恐る木簡に筆先をくっつけ、すっと真横に線を引いた。次に縦線を引く。十字の線の中心点から斜め下に向かって左と右にそれぞれ線を下ろす。

「これでいいの?」

「次の文字はちょっといきなり難しいが、上から順に書いていくんだ」

 最初の文字と違って、ぎゅっと様々な線が詰まっていて文字がつぶれてしまいそうだ。

(あれ、最後の部分はさっき書いたのと同じ文字だ……)

 ゆっくりと時間をかけて書いた文字は不格好で、お手本とは似ても似つかない。しかし、大足は気にせずに、むしろ褒める。

「いいぞ。この文字はね、君の名前だよ。上のは『き』、下のは『は』。これを組み合わせて、『このは』と読む」

「そうなの? すごい…… あたし初めて名前を書いた!」

 つい先ほどまでものすごく嫌々、筆をとっていた木葉が興奮している。大足は微笑んだ。自分も子供の頃父親から初めて文字を、自分の名前を習った時と同じような気持ちになったことを思い出した。だが、次の言葉は木葉の喜びに水を差してしまった。

「小刀は使えるね? それで今書いた文字を薄く削って木簡をまた真っ新に」

「嫌よ」

「どうして? そうじゃないと、次の練習ができないだろう」

 それでも木葉は渋った。初めて書いた自分の名前が愛おしくなってしまい、削るなんてとんでもないと思ったからだ。

「これ、もらっちゃダメ? あたしの名前、削りたくないんだもん」

「木簡は本当に使えなくなるまで削って何度も使うものだ」

「……それは大足さんがもう子供の時から木簡を使ってるから、そう言えるのよ。あたしにとっては女医になる第一歩の宝物なの!」

 木葉は大足が「うん」と言うまで、筆を硯に置き、両手を膝の上に乗せて待った。待ったというよりも、無言の抵抗を示したと言った方が適切かもしれない。

「わかったよ。君が強情な学生だってことがね。好きにしなさい。その代わり、たくさん課題を出すよ」

「ありがとう! 大切にするわ、この木簡。勉強が辛くなったらこれ見てがんばる」

 目を輝かせて勢いよく言ったものの、大足は初日から「学問に情けは不要」とたくさんの木簡を繰り出しては、木葉に読み書きをさせた。さすがに同じような文字ばかり書かされて、次第に飽きてくる。

「どうした? 眠そうな顔だ。今日はもうここで止めるか。明日は始める前に小試をする。これは毎日やるぞ」

「ええー……」

 生まれて初めてこれほど頭を使ったのではないかと思うほど木葉は多くの文字を吸収し、頭が爆発しそうな気がした。疲れたよという顔をしてみせたが、表情を一切変えずに黙って見つめ返してくる大足が容赦ないということがわかっただけだ。

「佐久太! この子を家まで送り届けてくれ」

「了解です」

 こうして木葉の文字習得訓練の日々が始まった。


 人工的に作られた池には次々とほぼ全裸の男たちが飛び込んで、野太い歓声を上げている。葛飾軍団の練兵場の隣の人工池は訓練で汗だくになった兵士たちの火照った体を多少なりとも冷却させていた。

「真熊」

 頭まで水面下に沈めて、再び勢いよく顔を出した真熊の頭上から声が降ってきた。それが聞き慣れた幹部の声だとわかると、真熊は急いで体を回して敬礼の姿勢を取った。

「そんなに畏まるな。今日の競技の結果は見事だったぞ。明日の護衛を頼んだ」

「はっ」

 思いがけず激励の言葉を掛けられた真熊は、他の兵士たちから嫉妬と羨望の入り混じった視線を向けられているのに気付いていない。賤民の身分で突然軍団に配属された真熊は異端そのものだった。当初、賤民であることは隠されていたが、たちまち皆の知れ渡るところとなってしまったのは、校尉の大私部徳麻呂が言いふらしたためだ。

 軍団長である大毅は機嫌を損ねると手が付けられない。一級品の阿弥太の刀を気に食わないからといって気分で突き返す男である。そして、大毅の手足として兵士を「教育」するのが徳麻呂の役目だ。真熊も正当な理由なしに「教育」されたことが幾度とあったが、幹部に逆らうことができないという軍の掟が立ちはだかって理不尽な暴力に耐えなければならなかった。

「小毅に気に入られてるからって調子こいてんじゃねーよ」

 徳麻呂は上官に当たる小毅、つまり水浴びをしていた真熊に声を掛けた佐太忌寸人成にたて突くことができない代わりに真熊が標的になるのは当然のことだった。なぜなら真熊は賤民のくせに、強剛な者が選抜される弩手となり一目置かれる役目を与えられたからだ。

 翌日、軍団は東の郡境に真熊を含む二個隊を派遣し、印旛軍団から引き継がれたある集団を引き取った。

 それから数日後、菊野牧の付近に何やら謎の集落が作られつつあることに気付いた綾苅は休憩時間中に集落の様子を覗いに行った。周囲には一定間隔で兵士が配置され、物々しい雰囲気だ。見慣れない顔立ちの人間が五十名ほど存在するようだ。 その男たちが軍団の兵士らと共に竪穴住居を作ったり、地面を均したりしているのが見える。女子供は小さなものを運んだり、食事の用意をしていた。

(一体何なんだ、あいつら)

 しばらく観察していると、兵士の中に見知った顔を発見した。真熊だ。

「おい、何を始めようってんだ?」

「俘囚の集落を作ってるんだよ。俺はその見回り役」

「ふしゅう?」

「陸奥国から移送されてきた蝦夷のことさ。従属を申し出た集団の一部を下総国に配送して、その代わりにここで身の安全や生活の保障をする。あいつらは馬の扱いや武芸に秀でてるから、取り込んで損はないって小毅が言ってた」

 綾苅は俘囚という言葉を初めて知った。遠い土地の蝦夷のことや彼らが育てる馬の強いことは何となく知っているが、それが朝廷に屈して各地に連れてこられているとは……。集落の一部を下総国にと言っていたから、残りはまた別の土地に連れて行かれたのだろうか。

 見回りの途中だった真熊はすぐにその場を離れてしまったので、綾苅もまた仕事に戻ることにした。

 牧子の仕事は慣れると楽しいものであることがわかった。菊野牧は小規模で馬は一群つまり百疋のみ、責任者の牧長と文書担当の牧帳、そして牧子が首と従の二名で管理する。綾苅は一番下っ端の牧子従として、馬の飼育と繁殖に当たっている。

 今は春に生まれたばかりの十五疋の仔馬に手をかけている。と言っても基本的には母馬の母乳で育っているし、放牧なので思っていたほど大変ではない。ただし、牧の目的は強い軍馬を育てることなので、二歳になるまでの間が肝心だと綾苅は思っている。国守に同行して香取郡に視察に行った間に見かけた郡牧の馬はとてもじゃないが、軍団に供給できるような代物ではなかった。おそらく軍団の馬は郡司や裕福な農民が私的に飼育しているものを使っているのだろう。

「綾苅、そろそろ行こうか」

 近隣に集落が作られ始めてから十日後、牧子首の高比呂が厩に入ってきた。準備はできましたと告げ、綾苅は高比呂と俘囚集落へ向かった。

「今日受け取るのは種馬二疋ですよね」

「そうだよ」

 陸奥から俘囚を受け入れたのは様々な理由や背景があるが、良馬を獲得するためでもあった。下総国が蝦夷支配の基地であるということは常に強い馬を供給しなければならず、それゆえ国守は牧の重要性を認識しなければならなかった。

 集落に着くと軍団の兵士が二疋の立派な馬の手綱を持って、牧子たちを待っていた。

「菊野牧の者だ。馬を引き取りに来た」

 兵士から手綱を渡され、綾苅は集落に背を向けて歩き出す。栗毛のずっしりした四歳馬は確かに日本の馬とは異なる雰囲気を持っていた。馬の名前はカシンカとタタルと言うらしい。しかし、三十歩ほど進んだ時、綾苅の視界に何か影が入ってきた。

「お前、集落から来たのか?」

 綾苅が思わず声を掛けた相手は、淡い月毛の仔馬だった。どういうわけか、仔馬は手綱を地面に引き摺りながら綾苅とカシンカの横にぴったりくっついて離れない。 集落から勝手に出てきてしまったらしいが、さてどうしようかと思っていると、集落から一人の青年が走り出てきた。

「アンラム! どこ行くんだよ。カシンカとタタルは今日から和人のところで世話になるんだ。お前はうちに帰ろう」

 仔馬はアンラムと呼ばれた。青年は流暢な大和言葉を話しているが、顔つきが明らかに蝦夷のものだった。年は綾苅とそれほど違わないように見える。ただ、綾苅と高比呂を見る目がとても鋭く、あまり好意的に思っていないことが見て取れた。

「ほら、手綱。こいつ、持って帰ってくれよ」

 綾苅がアンラムの手綱を拾い上げて蝦夷の青年に渡すと、青年はぞんざいに受け取り、仔馬の体を引こうとした。ところが、アンラムは言うことを聞かずに綾苅とカシンカの間に逃げるように割って入り、蝦夷の青年とは顔を合わせようとしない。綾苅と高比呂が無視して歩を進めようとしたが、アンラムは当然だと言わんばかりに付いて来た。

「集落から受け取るのは二疋だけってことになってたんだから、お前がくっついてくると困るんだよ」

 そう言って追い返そうとしても仔馬はびくとも動かない。

「お前は和人と暮らしたいのか、アンラム? なら好きにしろ」

 青年は諦めた様子で仔馬から去ろうとする。青年が背を向けると、綾苅は慌てて呼び止めた。

「なぁ、俺は綾苅っていうんだ。あんた名前は? 蝦夷なのに俺たちの言葉がよくできるんだな」

「……父が越後国の下級官吏だったから。俺の名前はモヌイ」

 どこまでも愛想のない態度でモヌイは綾苅に告げると、速足でその場を立ち去った。十数年前、大足が越後国を巡察した時に愛嬌を振りまいていた十歳の蝦夷の子供は、俘囚として第二の人生を下総国で過ごすことを余儀なくされたのだった。

 牧に持ち帰った三疋の馬は結局全て飼育することになった。牧長は月毛の仔馬を集落に戻そうとしたが、綾苅の傍を離れようとせずにいたため根負けしたのだ。集落からも返せとは言ってきていない。

 しかし、一度だけモヌイが菊野牧を訪れて綾苅に面会を求めてきたことがあった。アンラムが適切な扱いを受けていることがわかるとモヌイは安心したようで、綾苅にこんなことを言った。

「俺は綾苅にならアンラムを育ててもらっていいと思った。ここみたいな和人の官牧は軍馬を育てるのが目的だろう? 俺たち蝦夷を支配するための牧だってことは知ってる。だからいつかアンラムが俺の故郷を攻める可能性があることも理解してる」

「必ずしも蝦夷のための軍馬になるわけじゃない。って言っても、慰めにはならないか。モヌイは越後にいたんだっけ?」

 なんとなく綾苅とモヌイは牧草の上に腰を下ろして、のんびりと草を食んでいる馬たちを眺めることになった。

「俺は十六年間、比較的平穏に越後の国府で暮らしていた。おさ(通訳)を得意としていたから重宝がられたんだよ。父が和人っていうのもあったし。でも十六の時、和人は陸奥と越後に二人の将軍を派遣して五か月間も俺たちと攻防を繰り広げたんだ」

「突然?」

「陸奥と越後の一部の蝦夷が支配領域や交易を巡る不満から和人を殺害するっていう事件が起きた。確か和銅二年三月のことだったな、和人が軍を率いて俺たちの領域に踏み込んできたのは」

 モヌイはその事件を鮮明に記憶していた。

 なぜなら和人を殺害した一人が兄として慕っていたキラウコロだったからだ。和人の軍団で鍛えていたキラウコロは、蝦夷の中に生まれていた様々な不満を聞くにつれ和人への憎しみを増大させていき、夜明け前に軍団の大毅と小毅を殺害してしまった。また別の場所でも、キラウコロと示し合わせた仲間たちが辺境に配置されていた兵士数名を害したのだ。

「それは黙っちゃいないだろ。軍団長を殺されたら越後国の面目が立たない」

「だろうな。キラウコロ兄さんはそのまま越後蝦夷を武装させて和人と交戦し、戦死した。いや、正確には捕えられて拷問にかけられた挙句に死に、遺体は飢えた犬の餌になったらしい」

 らしい、というのはモヌイはキラウコロが捕えられ、何度か拷問にかけられたところまでしか実際に見ていないからだ。モヌイは当時、国府の訳だったので和人側におり、キラウコロやその仲間の蝦夷たちの言い分を国府の官吏に伝える役目を負わされた。

「あの酷い傷は戦でできたものじゃなかった。顔や手足が変形するほど拷問されたんだ。俺はその時、初めて和人に憎悪を覚えたよ。それまでは和人にも可愛がられて何も考えずに生きてきたけれど」

 それからモヌイは国府から密かに去り、越後から陸奥へ逃げた。陸奥も同じような状況だったので和人の軍隊が撤退してからある集落に住みつくようになり、昨年、その集落のエカシ(長老)の判断で俘囚となったのだった。

「陸奥で妻をもらったけど、下総に移送される途中で流産してすぐに死んだ。身重の妻は長旅に耐えられなかった」

 黙って話を聞いていた綾苅は、モヌイの視線が好意的でなかった理由をすっかり理解した。同胞が拷問にあった上に屈辱的な扱いを受け、強制的に移住させられる途中で妻子を失った蝦夷の青年が和人に良い顔をするわけがない。

「……俺の知らない世界でそんなことがあったんだな。妻子のことは同情するよ。本当に残念だったと思う。俺の友人で夫と子を亡くしたやつがいるんだ」

 下総国がモヌイにとって遠い別世界だとしても、家族がいればまた違った見え方になっただろう。でも、と綾苅は同情の言葉の後に付け足した。

「和人と交戦したことについては同情できない。俺は蝦夷ではないから。賤民だとしても、俺は……和人だから」

 綾苅はモヌイから視線を外して言い放った。曲がりなりにも平穏な環境が保たれていたにも関わらず先に和人を襲撃したのは蝦夷の方ではないか。自分にしては随分と真面目に受け答えしてしまったなと思ったが、綾苅の普段の態度を知らないモヌイは半ば諦め顔で立ち上がる。

「蝦夷の境遇をわかってくれとは言わない。賤民のお前に不満を漏らしても詮無きことだからな。それよりもアンラムを最強の軍馬にでもしてくれ」

 モヌイは綾苅を一瞥して牧草地を後にした。


 不条理過ぎる、と勝は心の中で盛大に舌打ちをした。

 目標であり尊敬する医博士の日下部刀利から女医の育成のために力を貸してほしいと依頼されたのは一か月前。律令で女医の存在は認められていたから、その時は国府での新しい試みなのだなくらいにしか思わず、師匠の頼みとあらばと気安く引き受けてしまったのだが、すぐに後悔することになった。

「それで、女医候補生は何人ですか?」

「とりあえず一人だよ。ほら、君が以前、国守から診察を指示された大領家女の……」

「まさかそれって――」

 嫌な予感は的中した。こともあろうに国守交代式に乗じて訴え状を持ち出し、その場を混乱させた賤民たちの仲間の一人が女医候補生だと!? あり得ない。厳罰に処すべきなのに、それどころか今ではあいつらは国守お気に入りの雑用係で、あの遊び人は菊野牧に配置換えになったらしいし、すぐにキレる感じの男は軍団の弩手をやっているとか。

「博士、いいのですか、あの女は反抗的で手に負えません。高向様もこう言っては失礼ですが非常識というか何というか、寛大すぎます。いや、おかしな考えの持ち主では?」

「まぁ、確かに前国守とは方向性が大分異なる人だねぇ。とにかく、君は年末に国守による試験と面接が控えてる。それに合格すれば医人になれるのだから、国守からの課題だと思って取り組んでほしい」

 穏やかな微笑みでそう返されてしまうと、勝はこれ以上食い下がることはできない。以前の賤民たちの診察と所見報告を提出した後、国守は勝に直接、「ご苦労さま。君には期待しているよ」と労いの言葉をかけてくれたのだ。国守は勝の並々ならぬ野心、つまり早く下総国から平城に赴き、典薬寮での更なる研鑽を積み医博士になりたいという意志を把握しているようだった。

 大足からすれば、勝の医博士への動機が地位と名声の獲得であることくらいお見通しだったので、若者のやる気をうまいこと引き出せば結果として国のためになる、大いに利用してやろうじゃないかという気持ちでいた。

「ところで博士、国が女医を育成するという事例は?」

「聞いたことはないね。うまく行けば下総国が初の例になるかな」

 本当に突拍子もないことを思いついたんだな、あの国守は。勝は国守が実は自分の名を上げるためにこの話を考え出したのではないかと推測した。今の天皇は女人だし、もし下総国から女医が誕生したら必ず天皇まで報告が行き、下総国守高向朝臣の名は一気に高まるだろう。そうなれば、褒美が期待できるだけでなく次の人事にも有利に働く。清廉潔白そうな顔をして、案外したたかな奴なんだなと勝は鼻で笑った。

 抵抗しても無駄だということは、日下部の態度から理解できた。自分の年末の試験も左右されかねないことが大きく、勝は観念して女医育成に必要な経、つまり指南書を選んでいる。女医には口頭で産科を始めとして創腫、傷折、針灸を伝授することになっている。そもそも勝には産科が手薄い分野だったから、この機に自分も勉強し直せということなのだろうか。

 ところが、日下部博士から意外な指示が出された。正確には国守の指示ということらしい。

「女医生は文字を習得しているそうだよ。だから経を用いて教え、さらに、女医の知識だけでなく医生の履修科目と同じで良い。君なら難なくできるね?」

「医生と同じ、ですか。無茶苦茶にも程があります」

 勝は呆れてしまったが、確かに自分が学んできたことを経を使って指導する方が、女医の科目を口頭で伝授するよりもやり易そうではある。

「わかりました。ただし、その家女がついて来られるかどうかは知りませんよ」

「そこを指導するのが君の役目じゃないか。まぁ、頼むよ」

 日下部は激励を示すために弟子の肩を軽く叩いた。


 課業が終わり医学舎から人がはけていった後、勝と日下部は太日川に面した曹司(仕事のための部屋)に足を運んだ。真夏の西日が容赦なく曹司の壁を貫いている。夕刻とはいえ、まだまだ熱気が収まらず戸は開け放たれていた。

 その女は二人よりも先に曹司に入っており、少し俯き加減で着座していた。橡色の衣が彼女の身分を露わに見せている。勝も腰を下ろすと、家女がゆっくりと顔を上げた。西日に眩しそうに眼を細めながら、二人の視線が交差する。こちらを睨みつけるその瞳の強烈さは、まるで西日をそのまま炎に変えてしまったかのようだ、と勝は思った。

「もう顔見知りとは思いますが、こちらが今日から女医の科目を指導する大私部勝医生です。私は医博士の日下部刀利。国守の特別な計らいによって勉強できるのですから、しっかり励んでくださいね」

 下総国府の三大「目の保養組」に含まれる日下部は、賤民の木葉に対しても普段通りの態度で優しく接している。木葉は少し安心したのか、ぎこちなくも微笑んで「はい、がんばります」と答えた。むしろどうして他の医生と同じようにこの日下部博士に師事することができないのかしら、と不満にすら思ったほどだ。

「じゃあ、翌日にどこまで進めることができたか、成果も含めて記録を私に提出してください。これは旬ごとにまとめて私から国守に報告します。ではよろしくね、勝君」

 勝は無言で博士に頭を下げ、退出を見送った。

 曹司に二人だけになると予想していたように重苦しい沈黙が続き、太日川に着岸したこの日最後の舟から聞こえる荷揚げの音や怒号が聞こえてきた。

「少し肉付きと顔色が良くなったな」

 特に感慨深そうな口調でもなく、勝は事実を端的に言った。初めて会った時の木葉は、後頭部で括られた長い髪は乱れ気味で、顔は青白く、十分な食事を採っていないせいで不健康な痩せ方をしていた。この世の全ての不幸を背負っているような苦しみと悲しみに満ちた瞳で、診察をしようとした勝を見つめたのだ。

 けれども一方で、その瞳は今日も相変わらず激情を秘めて、頬を上気させながら真っ直ぐに勝を射ぬいている。すさまじい嫌悪感に、勝は一瞬仰け反った。

「……あの時と同じだな、お前。鬼の形相ってやつ」

「ふん、ご挨拶ね。どんだけ女に屈辱を味わわせる気?」

「僕だって、お前みたいな女に医学を教授するなんて屈辱としか思ってないね。そもそも女医の資格って何か知ってるのか?」

「何よ? 賤民から選ばれるんでしょ?」

 勝は、やれやれと大袈裟にため息をついてみせた。

「賤民だから誰でもいいわけじゃない。知性に秀でた女がその条件なんだよ。お前に到底知性があるとは思えない。国守も何を血迷ったんだか」

 剣呑な顔つきの木葉が最後の一言で勝に噛みついた。

「ちょっと、あたしが馬鹿だっていうのもムカつくけど! 大足さんの悪口は言わないでよっ」

「大足、さん……? うわ、お前、ほんとアホだな、国守を気安くそんな風に呼んで…… まぁ、いい。講義始めるから。ちゃんと進まないと僕の評価に差しさわりが出る」

 ふーん、いるよね自分の評価しか気にしない奴って。木葉が無表情でつぶやくと、勝は腸が煮えくり返るという表現はきっと今の自分の腹の状態を言うのだななどと考えながら、三種類の経を木葉の机に置いた。

「文字を習ったと聞いたけど? 読めるんだろ?」

 その言外に、どうせお前の頭じゃロクに読み書きできないに決まっているという嫌味を感じ取った木葉は、深呼吸をしてひと息に並べられた本の名前を読み上げていった。

「『神農本草経』、『甲乙経』、それから『脈経』。合ってるでしょ」

 ちらりと様子を覗うと、勝は声を出さずに笑っていた。いかにも頭の良い医生という感じで、木葉は勝から冷たさを感じ取った。

「お前はまずこの三つの経を全て学ぶ必要がある。あ、これはそれぞれ第一巻を持ってきただけだから、実際には何冊も読まなきゃいけない。最初は『本草経』から。だけどその前に医学の概要だ」

 とりあえず勝が講義態勢に切り替わったので、木葉も居住まいを正して話を聞くことにした。

(ああ、なんであの素敵な日下部様があたしの先生じゃないのよ。でも、勝は大足さんの指名なんだし、あたしは女医になるために何でも耐えるって誓ったんだから、このクソ男ごときにひよっちゃダメよ。喧嘩しに来たわけじゃないんだ)

「この世は陰と陽という二つの性質に分けられていて、変化しながら役割を代えていく。どちらかが強すぎても弱すぎてもいけない。人間の体も自然と同じ原理で動いてるから、陰と陽の均衡が保たれた状態が健康というわけだ」

 突然、木葉にとってはものすごく抽象的な話を始められてたちまち木葉の眉は寄ってしまった。実体のないもののことなど今まで生きてきて考えたこともなかったのだ。

「……勝、どういう意味かわからない」

「まだ始めたばかりだぞ。僕の方こそ意味がわからないよ。……要するに、昼間は陽が強く出ているけれど、だんだん陰が強くなって夜に交代する。四季も陰陽の強弱と交代なんだ。天と地、太陽と月、男と女、上半身と下半身もそれぞれ陽と陰を表していて、どちらかが欠けている世界はあり得ない。わかったか?」

 そういう風に具体的に話してもらわないと理解がすんなりいかない。勝は続けて、どうして人は病にかかるのかを説明した。

「病にかからない、もしくはかかっても治ろうという力が働く。それを正気と言って、反対にからだを悪くする元になるものは邪気だ。正気が強ければ邪気を寄せ付けることはない。だから医学の役割は…… それは何だと思う?」

「えっ、ああ、正気を強くすること?」

「そう。正気も均衡が重要で、人体を構成する四つの要素、すなわち気、血、津液、精が正常に循環していれば邪気を寄せ付けない」

 この後、勝は淡々と四つの要素の変調と五臓について解説し、一回目の講義が終わる頃にはかなり遅い時間になっていた。おそらく通常の女医として育成するのであれば医学の概論などは必要でなく、最初から具体的な治療方法を口頭で教えれば事が足りただろう。しかし、それは大足の意図するところではなかった。

 おかげで木葉は初日から知恵熱を出す勢いで、勝の講義を頭に詰め込まなければならなかった。講義を聞きながら木簡に覚え書きを残すというのは至難の業で、たくさん書き漏らした部分があったが、勝は翌日に今日の講義の試験をすると宣言したのだ。

「それくらい当然だろ? 短期間で基礎は叩き込んでもらわないと。僕は医学舎に寝泊まりしてるから、もう帰宅していい」

「わかりました。お願いしたのはあたしなんだから、やります。じゃあ、また明日もお願いします」

 木葉は講義が終わると勝と目を合わせることなく荷物をまとめて医学舎を出た。

 出口に立ち止って空を見上げると、澄んだ闇にいくつかの星を見つけることができた。遅くなってしまった。明日までに復習をしなければならない。木葉が医学を習得する間は、国守の指示で雑務に従事せずに医学に集中することになり、昼間も勉強に費やすことができる。しかし、木葉は最低限の畑仕事や洗濯や食事の用意などは今まで通りやったし、時々は工房に機織りをしにも行った。

「あたしは負けない。どんなに課題を出されても厳しく言われても、めげたりなんかするもんか。きっと大足さんを満足させてみせるわ」

 国守があの腹立たしい医生を講師に選んだのは、自分を奮起させるためだったのだろうかと木葉はうっかり気付いてしまった。


「……昨日、試験をするって僕はちゃんと言ったはずだ」

 いかにも不機嫌そうに勝は腕組みをして木葉を見下ろした。それは知っている。だから現に睡眠時間を削って復習をして試験に臨んだではないか。けれども難しすぎる。初心者なのだからもっと要所に絞って質問してほしいと抗議したものの、勝は冷たく突き返した。

「これだから、にわかに勉強したいなんて言い出す奴は甘いんだよ。経を全て暗唱するなんて基本だろう。実際に診察して証を立てる時には頭の中で最適な組み合わせを考えなきゃいけないんだぞ。五臓の色体表なんて当たり前なんだよ」

 その表はざっと百通りの組み合わせがあった。肝に対応する季節は何か、心と強く関連する精は何か、脾にとって食すると良い家畜と菜は何か。そのような組み合わせや昨日習ったことを全て覚えるなんて、木葉には無理な話だった。

「もう一回覚えるから」

「それは明日の試験と一緒に再度試問する。今日は次の課を進めるぞ」

 確かに厳しい課題だとは思う。勝が医生になった初年度と比べると、木葉の個人的な講義内容は濃かったし、余裕がないのはわかっていた。そうだとしても、自分から医学を学びたいと無理矢理国守に頼み込んだのは木葉なのだから、死ぬ気で付いてきてもらわなければ困る。

「僕はお前のために時間を割いて真剣に講義してるんだ。確かにお前のことは心の底から軽蔑してるけど、僕は国守の命令にはちゃんと従ってる。それで成果を出せないならお前の怠惰が原因だし、僕に恥をかかせないでほしいね」

 木葉は厳しい言葉を浴びせられ、くちびるをきゅっと結んで勝と対峙した。わかってる、そんなこと。そもそもまともな知識を獲得したことのない賤民が医学を学ぶことがどんなに無謀で、努力の必要なことであるかは本人が一番よくわかっている。

「……あたしは諦めないから。助けたい人たちがいなくならない限り、国でも女医は必要なのよ」

「なんだかわからないが立派な志だな。僕にはそういう発想自体が理解できない。さて、いい加減講義始めるぞ」

 無表情を変えない勝を見るにつけ、木葉は大領一族は救いようのない冷血漢なんだわと嫌悪せずにいられなかった。この男は弱者を助けたいがために医人を目指すという考えは持ち合わせていないのだ。

 その代わりに名声やら地位やらを追いかけて、それってとどのつまり対価が欲しいだけなのね。民を搾取した上にまだ富を求めるなんて、どれだけ強欲なのかしら。

「聞いてるのか? もとから馬鹿なのに、口が半開きで馬鹿丸出しだ」

 えっと気づいて慌てて口元を引き締めると同時に、筆を持つ手に力が入る。本当にどこまで侮辱する気なのだ、こいつは。当の本人はたいして面白くもなさそうに、仏頂面で経に視線を落としている。

「……つまり、三種類の病因にはさらにいくつかの病を引き起こす因に分けられる。けれども、それらも均衡の問題に還元され、行き過ぎることが悪影響を人体に及ぼすというわけだ。例えば、外因の風、寒、暑、湿、燥、火は自然に存在して無害だ。これらが強すぎたり弱すぎたりする時に邪気となる」

 淡々と説明をしていく勝は大人しく木葉が下を向いて話を聞いているものだと思い込んでいたが、木葉の耳に勝の声は聞こえていなかった。そして、勝が外因の細かい説明に入ろうとした時、思い切り強く机が乾いた音を立てた。

「これ以上、あたしを馬鹿にしたらタダじゃおかないからっ」

 両手を机に押し付けて、中腰になった木葉が勝を上から見下ろしている。その勢いで生み出された風が燭台の炎を大きく揺らした。

「講義の邪魔をするなら僕はもう引き上げるよ」

「じゃあその前に一言! あたし、絶対にあんたなんかに負けない。医学の知識も技術もいずれ追い越して見せるわ。あたしを馬鹿呼ばわりしたことを後悔しなさいよ」

 華奢な肩が僅かに震えている。勢い余って啖呵を切った家女の粗末な衣の袖を、勝は掴んだ。

「……橡色が、何を言ってんだよ」

 小さな声で呟いた次の瞬間には、今度は勝の左頬が派手な音を立てた。この女の掌は大丈夫なのか、と自分の頬が思い切りぶたれて痺れる痛みが走っているにも関わらず、勝は冷静に考えていた。無言で立ち去ろうとした木葉の腕を容赦なく引っ掴むと、勝は元の位置に引き摺って座らせた。いくらひ弱そうに見えても、勝は男だった。

「僕をぶつとはいい度胸だ。その挑戦は受けてやるよ。いいのか、女医生が講義中に無断で退席して課業を放棄したって報告するけど? こんなことを続けてたらいくら高向様でもお前に愛想を尽かすと思うね」

 感情がいつになくあらぶっていた木葉は、大足のことを持ち出されて我に返った。

(そうだ、あたしがしっかり修業しないと大足さんに迷惑がかかるし、顔に泥を塗ることになってしまうじゃない。要するに、あたしがこの男に馬鹿だって罵られないようになればいいんだわ)

 木葉は勝から少し視線を逸らしながら、再び筆を取った。

「講義の続きを、お願いします」

 恐ろしく素直に頭を下げられて勝は面食らったが、今日の課業を終わらせない限り自分も解放されないので、続きを説明し始めた。

「……というのが、病因のあらましだ。明日は今日の分と昨日の分の試験をする。これでできなければ、僕は博士にどうやってもお前の能力に見込みがないと伝えるから覚悟しておけよ」

 今の時刻がどれくらいなのかわからない。ただ、途中まで外から聞こえていた官衙の喧騒も聞こえなくなっている。なかなか帰らないので弟たちが心配しているかもしれない。しかし、木葉はあることを決めていた。

「ねぇ、この医学舎には使わない曹司はある? 小さい物置みたいなところでもいいんだけど」

「どうして?」

「今日はここに泊まる。もう今からうちに帰って勉強する時間が惜しいの。それに、ここなら参照したい経をすぐに見られるし」

「悪足掻きな気がするけど、好きにしろよ。場所はここでいい。昼間も使ってないから」

 呆れ気味にそう言うと、勝は私物を抱えて出ていってしまった。勝は医学舎の宿坊で寝起きしている。家に帰るのがめんどくさいということもあるし、やはり勉強するには医学舎は便利だからだ。

(気力だけはあるな、あの女。でも、正直言って明日の試験が全滅であってほしい。僕はただ医人になりたいだけなのに、なんで他の医生よりも苦労を背負い込まなきゃいけないんだ)

 勝は理不尽という籤を引いてしまった己の運のなさに溜息をついた。


 目の辺りが橙色に明るい。そして耳を澄ますと近くで男たちの声がする。近くで、といってもいくつかの壁を隔てた向こう側の距離だ。

「んん……」

 木葉はごろりと仰向けになった。え、仰向け……

「うわぁ、あたし寝てた、いつの間に!」

 慌てて飛び起きると、急激に空腹を感じた。見渡すと、あの医学舎の一角にある曹司が視界に入った。昨晩、勝の講義が終わった後、木葉は猛烈に復習をしていた。頭が破裂するかと思うほど、経を読みこみ、講義の覚え書きを読み返し、暗唱し、そして気が付いたらぱたりと眠りこけていたというわけだ。

 外の声は、医学舎で学んでいる医生たちの声だろう。もう日が高いことを考えると一課業が終わった後の休憩時間かもしれない。

 木葉はひとまず空腹を何とかしようと、戸口に手を掛けた。すると、自動的に引き戸が開き、目の前に影が現れた。

「おっと、お目覚めだね」

 少し驚いたように言ったその人は勝が師と仰ぐ日下部博士だった。

「勝君から聞いたよ。泊まりで勉強してたんだってね。あんまり女人が一人で泊まって無茶をするものではないけど、まぁ、近くに勝君も寝泊まりしてるから大丈夫かな。ところで、お腹空いてるんじゃない?」

 博士は微笑みながら小さな木の皮の包と竹筒を差し出した。受け取ると包はほんのり温かく、鰹節の香りがした。

「握り飯! いいんですか?」

「どうぞ。医学生であることには変わらないから給食だよ。というか、国守がそうしろっておっしゃってね」

「えっ、ありがとうございます。あたし、今日の試験絶対及第点取ってみせます!」

「うん、その調子」

 日下部が爽やかに去っていくと、木葉は握り飯の包を胸に抱きしめた。

(持ってきてくれたのは博士だけど、これをあたしに食べさせるようにって言ったのは大足さんなのね……)

 しばらく感慨に耽った乙女は、その後勢いよく朝飯を胃袋に収めると再び机に向かったのであった。

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