ペチャとポロンの冒険2

「「森、森、森〜♪ 森がモリモリ〜♪」」


 ペチャとポロンは森の不気味さを誤魔化すために、即興で作った森の歌を歌いながら、更に深くなってゆく森の中を突き進む。


「ねぇねぇ、お姉ちゃん」

 ペチャはふと素朴な疑問を思い浮かべ、ポロンに声を掛けた。


「森が山盛り〜♪ なぁに、ペチャ」

 ポロンは歌を中断し、ペチャの方を見る。


「お父さんとお母さんって、何で旅をしてたの?」

「あー、なんかね、お父さんがお母さんを無理矢理攫って、駆け落ちしちゃったからって聞いたよ」


「えー! じゃあ、お父さんって悪い人なの!?」

「うーん、そうかもね。でも結果的に結婚して丸く収まってるからいいんじゃない? おかげで私達も生まれてきたわけだし」


「……もしかして、僕達もお父さんにどこかから攫われてきたのかもよ!?」

「大丈夫大丈夫、あんたはお母さんがくしゃみした時に、口から出てきたって言ってたわよ」


「えぇー!? じゃあ、お姉ちゃんは!?」

「お父さんがあくびした時に鼻から出てきたって」


「えぇー!? そんなの嫌だ!! っていうか、お父さんから出てきたの!?」

「……あんたまさか信じてるんじゃないわよね?」


「え? 嘘なの?」

「お父さん達がそう言ってたのは本当だけど、嘘に決まってるでしょ!」


 そんな馬鹿馬鹿しい話をしながら歩いていると、ふとポロンの目に果実の実った木が写った。森に入ってから数時間、ずっと歩き通しだった二人はすっかりお腹が空いていた。

 ポロンはその木に歩み寄り、大きく跳躍すると、剣を振って木の枝から果実を二つ落とす。それをペチャが下でキャッチした。

 やや疲れていた二人は、そのまま木の根元に腰掛けて休憩する事にする。


「そういえばお姉ちゃんって、女なのにお父さんに似てるよね。ツリ目だし、剣が上手いし、運動得意だし」

「ペチャは男なのにお母さんに似てるわよね。タレ目だし、魔法得意だし、マイペースだし」

「え? 僕お母さん似かなぁ?」


 そう言っているうちに、ペチャは早くも自分の分の果実を食べ終わっており、それを見たポロンは自分の食べかけの果実を二つに割ると、ペチャに差し出す。ペチャはそれを受け取り、一口で口の中に放り込んだ。


「それによく食べるし、やっぱりお母さん似よ」

「えー、僕は男だから、お父さんに似たかったなぁ」


「でもお父さんってちょっとバカだよ。私だってお母さんに似たかったわよ」

「お母さんも色々変わり者だよ」


「あんたは似てる似てない以前にちょっとは男らしくなりなさいよ。こんな森くらいでビクビクしてさ」

「お姉ちゃんはもうちょっと女の子らしくしなよ。森の近くに住んでるピパちゃんは、半獣人だけどすっごく女の子らしいよ」


「それを言ったら領主様の息子のディップは剣も強いし男らしいわよ。アホだけど」

「ディップ兄ちゃんはお父さんが元将軍だもん。カッコいいし」


「親は関係ないでしょう。とにかく男の子は女の子を守ってあげなきゃいけないんだからね。あんたみたいにウジウジした子は女の子にモテないわよ」

「別にモテなくていいよぉ。お姉ちゃんだってガサツでバカだと男の子からモテないよ」


 カッチーン、ポチポチポチポチ。


 ポロンの中で無数のスイッチが入る音が聞こえた。


「何よガサツでバカって! もう夜中にトイレ行きたくなっても一緒に行ってあげないわよ! この寝小便ペチャ!」

「うわぁ! それ言うのはズルイよ! もうおねしょしてないもん! お姉ちゃんだってピーマン食べられないくせに!」


「あんたは人参食べられないでしょう!」

「人参ケーキなら食べれるもん! お姉ちゃんはピーマンケーキ食べれないでしょ!」


「人参ケーキは人参じゃなくてケーキだから! しかもピーマンケーキとかこの世に存在しませんー! バーカ!」

「バカって言った方がバカなんだよ! 自己紹介ありがとうございますー!」


「キーッ! ムカつく! あんたのおねしょの話、ピパちゃんにしてやるんだからね!」

「サイテー! そういうの最低だよお姉ちゃん! もし言ったらディップお兄ちゃんに、お姉ちゃんが家で普通にオナラしてること言うからね!」


「あんたそんな事言ったらぶっ飛ばすわよ!」

「死なばもろともだよ! 刺し違える覚悟だよ!」


「「ぐぬぬぬ……」」


 なんだか険悪な空気になってしまったが、いつまでも喧嘩をしていては夜になってしまう。二人はギスギスしながらも、薬草求めて更に森の奥へと向かうのであった。


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