その頃あの男は
「ナップ様! 右です!」
フロナディアの声に反応したナップは後方に素早く跳躍し、襲い来る巨大な尾を躱した。
今、ナップとフロナディアの眼前には全長十メートルを超えるドラゴンがおり、二人を今にも食い殺さんと、鋭い牙を剥いている。
ナップはフロナディアの隣に着地して、耳打ちをした。
「フロナディア様、このままではジリ貧です。一気にケリをつけましょう!」
「承知しましたわ!」
二人が互いに頷くと、ナップの全身からは金色の光が、フロナディアの愛剣フラミンゴからは紅の光が放たれる。
「喜装天鎧・極!!」
「刃技・疾風怒刀!!」
叫んだ後にナップが駆け出すと、ドラゴンは大きく息を吸い込み、強烈な火炎を吐き出す。しかし、その火炎はナップの身に纏われた、感情術の鎧によって弾かれた。
火炎を弾きながら駆け抜けたナップの剣が、ドラゴンの首元に深く突き刺さる。しかしドラゴンの皮膚は厚く、致命傷には至っていない。
「今です! フロナディア様!」
ナップの合図で、ドラゴンの側面に回り込んでいたフロナディアはフラミンゴから伸びる赤い刃を振るった。すると。
ブァッ
突然ドラゴンがその巨大な翼を力強く羽ばたかせた。フロナディアはその風圧におもわずよろめく。そしてドラゴンはそのまま翼を上下させ、空中へと舞い上がった。
「くそっ!」
ナップは刺さった剣を更に深く押し込もうとするが、剣はドラゴンの皮膚に食い込んだままビクともしない。逆に引き抜こうともしたが、やはりビクともしない。
フロナディアが慌てて剣を振ったが、ドラゴンは既に刃が届かぬ空高くまで飛んでいた。
「うおぉ!? フロナディア様ぁ!!」
「ナップ様ー!! どこに行かれるのですか!?」
そしてドラゴンはナップをぶら下げたまま、バッサバッサとどこかへ向かって飛んで行くのであった。
何をしているのだ。ナップ。
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