学園祭2
次に二人が向かったのは、レオが所属している弓技同好会の的当て屋だった。店先ではレオが呼び込みをやっており、二人を見つけたレオはすぐに案内してくれた。
「二人ともやっていってくれよ!」
レオが案内してくれたテントの奥には、武術学科が弓技の授業で使う丸い的がずらりと並んでおり、受付には、オモチャの長弓、短弓、ボウガンに手裏剣、吹き矢まで置いてある。
「どれ使ってもいいから、この線からあの的の真ん中に当てたら景品だ」
「何が貰えるんだ?」
「まぁ、基本はお菓子だな。あとは提携してる屋台の無料券とか」
そう言ったレオの手には、「フェアリーボール焼き」と書かれたチケットが握られている。二人はさっき食べたばかりなので、正直無料券の方はいらなかった。
二人の微妙なリアクションを見て、レオはムチャに耳打ちをした。
「こんな景品もあるんだぜ」
レオはムチャをテントの隅に連れて行き、ポケットから何かの束を取り出す。それは魔法写真機を使って撮られた、サキュバス化した女子達の写真であった。
「ほほぅ、これはこれは……いや、これどうしたんだ?」
「昨日な、あのコンパを組んでくれた新聞部のヘンリダが、サキュバス達から隠れながら撮ってたんだよ」
あの状況でエロスに走るとは、戦場カメラマンも真っ青な行動力である。実はヘンリダは隠密魔法に関しては、トロン以上の腕前であった。やはりこの学園の学生は頼もしい。
「ただし、この景品は吹き矢でど真ん中に当てないと貰えないけどな」
「それ、ズルくないか?」
的当てをしている人々を見ると、係の生徒に弓矢の手ほどきを受けている子供達や、きゃーきゃー言いながらボウガンを構えている女子達に混じって、男子生徒や中年男性達が顔を赤くして必死に吹き矢を吹いている。そして的を外すと、財布から硬貨を取り出し、ヤケになったように係員に渡している。なるほど、なかなか儲かっているようだ。
「大丈夫大丈夫、お前にはこっそり普通の弓でやらせてやるからよ。それにこの景品を思いついたのも、お前が寮に来た日に見せてくれた、あの魔物絵札が元なんだぜ」
ムチャはそんな事もあったなぁと、ちょっと懐かしくなる。
二人が悪い話しをしていると、テントの奥でボムンと音がして、的の一つが黒こげになった。レオとムチャがそちらを見ると、トロンが杖を構えてこっちを睨んでいる。どうやらいやらしい事ばかり考えていると、お前達を的にするぞという事らしい。二人は頷いて、この話を無かった事にした。
「あ、後でお笑い観に行くから、頑張れよ!」
レオはトロンに耳を引っ張られながら去って行くムチャに手を振った。
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