退学

 サキュバス達が帰った後、生徒達と教員総出で校舎や屋台の復旧が行われ、朝方にはなんとか学園祭の準備が整った。校舎に泊まり込みで準備をしたものも多く、それが案外楽しかったとかなんとか。


 生徒達の体調を気遣った学園長の采配で、本来九時開始の予定を十一時に遅らせる事になったが、学園祭は無事開催を迎える事ができた。


 開会と同時に花火が打ち上がり、近隣の学校の生徒達や街の人々が学園内に押し寄せる中、ムチャとトロンはベローバに学園長室に呼び出されていた。


「昨日あなた達の話を聞いてから、他の教員や役員の方々も含めて審議した結果、あなた方を本校から急遽退学させる事が決まりました」


 あの後二人は、なぜサキュバス達が学園を襲ったのかを、ベローバに正直に話した。別に二人が悪い事をしたわけではないが、結果的に二人が学園に滞在していたせいでサキュバスの襲撃を受けたという事を。


 その後緊急会議が行われ、ベローバや学園長もその結果には心苦しく思ったのだが、今後の他の生徒達の安全を考慮した結果、退学という結論に至ったのだ。


「まぁ、仕方ないよな」

「元々文化祭までの滞在予定だったしね」

「じゃあ先生、世話になったな。短い間だったけどありがとう。あと、迷惑かけて申し訳ない」

「お世話になりました」


 二人は正直に話した事を後悔してはいなかった。旅をしていれば出会いや別れは当たり前。ただ心残りは、学園祭のステージに立てなかった事だ。

 荷物をまとめるために寮へと帰ろうとする二人の背中に、ベローバは声を掛ける。


「お待ちなさい! 確かにあなた達の退学は決まりましたが、今日まではうちの生徒ですよ」


 振り向いた二人にベローバはにっこり微笑みかける。

「学園祭、思いっきり楽しみなさい」

 ベローバはババ……老人に戻ってしまったが、今のベローバは、サキュバスの時よりもいい女であった。

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