サキュバスパンデミック19
「 あれは仕方なかったんだ!」
「最低です! 乙女の告白の後にヤラセロー!なんて! ムチャさんの事本当に好きだったのに!」
ケセラの言う通り、あの状況で無ければムチャは最低な猿野郎である。トロンはなんとなく事情を察して何も言わなかったが、その目は冷たい。
「うわーん!! プリムラ様、せっかくチャンスをいただいたのに、私やられちゃいました。ヤられてないけどやられちゃいました」
「よしよし、いい子ね、大丈夫よ。いつも言っているでしょう? 嘘は許さないけど、ミスは許すって」
泣きついてきたケセラを、プリムラは優しく抱擁する。それは失恋した娘を慰める母親の姿そのものだ。
「とにかく、今度こそそこまでだプリムラ!」
かっこつけてはいるが、プリムラに剣を突きつけるムチャは、側から見ると完全に犯罪者である。
「あなた、なかなかやるわね。ケセラちゃんが好きになるのもわかる気がするわ」
全てを見ていたプリムラは、正直ちょっと引いてはいたが、ムチャの勇気ある行動に感心もしていた。
「褒めても何も出ないぞ! 俺は全てを捨てた男だ! 学園をめちゃくちゃにしやがって、なんでこんな事するんだ!?」
そう、学園の危機を救うために、男としての地位を底なし沼に沈めたムチャにはもう何も怖くはなかった。下手すると相方まで失う恐れもあった。
「そうね。ここまでたどり着いたご褒美に、少しお話ししてあげようかしら」
そう言ってプリムラは、ケセラを抱きしめたまま、ムチャ達に向き直る。
「まず、新生魔王軍の目的は、人間全てを滅ぼす事なの」
「だからなんでそんな事するんだよ!」
「ちゃんと聞いて。私達魔王軍の将は、私を含めて七人いて、それぞれ人間の犯した七つの罪の名を冠しているの」
「「七つの罪?」」
そういえばブレイクシアは自らを「傲慢のブレイクシア」と名乗っていたし、イルマは「嫉妬のイルマ」と名乗っていた。そしてプリムラは「色欲のプリムラ」だ。ムチャ達はそれについて深く考えてはいなかったが、ブレイクシアは自らが傲慢だからそう名乗っており、イルマは嫉妬深い性格なのかなぁ、くらいに思っていた。プリムラもその名の通りエロエロである。
「そう、私達は人間達に罪を償わせるために、魔王様に選ばれた存在なの」
「じゃあ、魔王軍には人間嫌いが揃っているから人間を滅ぼすって言うのか?」
「簡単に言うとそうね。でも、私はちょっと違うわ」
プリムラは目を閉じ、愛おしげに微笑む。
「私は人間達を愛おしいと思っているの」
「じゃあ、なんで魔王軍に?」
プリムラの言っている事は矛盾している。人間が好きななのに、人間を滅ぼそうとする魔王軍にいるだなんて、カレー嫌いがカレー屋でアルバイトをするようなものだ。
「それは、これから話してあげる」
プリムラはゆっくりと語り出した。
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