サキュバスパンデミック15

 高い高い時計塔の長い長い螺旋階段の中央にある吹き抜けを、チャムはトロスと二人で杖に跨り、ひたすら上昇して行く。そして頂上付近で「学長室」と書かれたプレートがかかった大きな扉を見つけ、杖を降りる。


 扉の向こうからは魔力とフェロモンがプンプン漂ってきており、向こう側にプリムラがいる事は明白である。


 二人はうなずき合い、覚悟を決めて勢いよく扉を開けた。


「お前の悪事もここまでだ!」

「お色気プンプン罪で逮捕するよ!」


 かっこよく決めた二人を見て、学長の椅子に座るプリムラは一瞬驚き、ニコリと微笑む。

「なるほどね、性別を入れ替えて私達の能力を防ぐなんて……やっぱりあなた達面白いわ」


「みんなを元に戻せ!」

 チャム達を前にしても、プリムラは微笑みを浮かべたまま微動だにしない。それどころかプリムラからは敵意すら感じず、むしろ慈愛すら感じるオーラを放っている。その事に二人は戸惑った。

 そんな二人にプリムラが問う。


「あなた達、息が合っていて素敵ね。もしかして恋人同士かしら?」

 チャムは剣を抜いて構える。

「違う! 俺たちは」

 そして言った。

「お笑いコンビだ!」


 プリムラは再び微笑む。

「あらそう、良かったわね。ケセラちゃん」


 二人が背後に気配を感じ、振り向いた時には既に遅かった。強力な昏倒の魔法により、一瞬にして二人の意識は眠りの闇に飲まれる。セイベツイレカワールは、サキュバスの能力は効かずとも、純粋な魔法を防ぐ効果はない。


 倒れた二人の背後に立っていたのは、覚悟を決めた目で二人を見つめるケセラであった。

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