サキュバスパンデミック13
「ううん……」
ハリーノが意識を取り戻した時、後頭部に何か柔らな感触を感じた。目を開けると、そこにはハリーノの顔を覗き込むエスペリアの顔がある。
どうやらハリーノはエスペリアに膝枕をされていたようだ。
「こんな時に貧血だなんて」
エスペリアはため息をつき、呆れ顔でハリーノの顔を見つめる。
体力の無いハリーノは、学校から女子寮まで無理をして全力で走り続けたために、緊張の糸が緩んだ時に貧血を起こしてしまったのだ。
「ご、ゴメン!」
本当はエスペリアの太腿の感触を楽しんでいたかったのだが、ハリーノはエスペリアに顔を覗き込まれているのが恥ずかしく、慌てて跳び起きる。
「僕、どれくらい寝てたの!?」
エスペリアの話によると、ハリーノは一時間程気絶してしまっていたらしく。その間にエスペリアが疲労軽減の魔法をかけてくれていたようで、疲労していた肉体は全快していた。
二人は急いで温泉洞窟を出ると、山道を下り、男子寮を目指す。その道中、先日三人が魔人に通せんぼされた細い道にさしかかる。すると、あの時のようにどこからか煙が立ち上り、魔人が姿を現した。魔人を見たエスペリアは身構え、攻撃魔法を放とうとしたが、それをハリーノの手が制する。
「むむ、またお前か」
魔人はハリーノの事を覚えていたのだ。
それもそのはず、三人が覗きを働き女子達にボッコボコにされた帰り道、ハリーノ達は再び現れた魔人と話をして、友達になっていたのだ。
実はこの魔人、男子達が覗きに来ないようにずっと温泉への道を守るように命じられており、とても寂しい思いをしていた。なので、魔人は友達になってくれた人間は、召喚主であるベローバに内緒でこっそり通してくれるのだ。
覚えているであろうか。
「友情が秘宝への道を開く」
という言葉を。
それは、仲間達の友情で力を合わせれば数々のトラップを乗り越えられるという意味では無く、本来強過ぎて倒す事が敵わぬ魔人と友人になる事で、温泉までの道を通してもらえるというOB達の引っ掛け問題だったのだ。
ハリーノの話を聞いた魔人は、召喚主であるベローバの危機を知り、二人に協力してくれる事になった。そして二人を背に乗せ、ムチャ達と合流するために旧校舎へと飛んだ。
二人が旧校舎に着くと、旧校舎はサキュバス達の突入により、ボロボロの外観が更にひどい事になっていた。サキュバス達は既にムチャ達を追ってどこかへ去っており、二人は廃墟のようになった旧校舎に入る。そこには魔力の使い過ぎで、今にも消えそうなヨチがいた。そう、ヨチは生きていた、いや、死んではいるが生きて……とにかく無事だったのだ。
ハリーノに魔力を分け与えられて、良くも悪くも成仏を免れたヨチは、ムチャ達が「セイベツイレカワール」を手に入れるために男子寮を経由して、時計塔へ向かった事を告げる。そして二人と魔人は、ムチャ達を追って時計塔へと飛び、間一髪でムチャのピンチを救ったのだ。
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