サキュバスパンデミック3
しばらく走り続け、湖の向こうに旧校舎が見えてきた。後は分かれ道を右に曲がり、真っ直ぐ行けば旧校舎へとたどり着ける。現校舎を離れるにつれてサキュバス達の数も減ってきているし、旧校舎への道は林の中を抜けるために、空を飛ぶサキュバス達をまくことができるはずだ。
すると、分かれ道の前でハリーノがピタリと立ち止まった。
「ハリーノ! 何してるんだよ! 早く走れ!」
レオがハリーノを引っ張るも、ハリーノは左側の分かれ道の先を見たまま動こうとしない。ハリーノが見るその方向には、中等部第一男子寮と女子寮がある。
「リャンピン。エスペリアは今日寮にいるんだよね?」
「うん。部屋の中から「行かない」って返事があったし、そのはずだけど……あなたまさか!?」
リャンピンがハリーノの意図に気付いた時には、ハリーノは既に寮に向かって走り出していた。
「ハリーノ!?」
皆がハリーノの背を追おうとすると、ハリーノは走りながら叫ぶ。
「エスペリアを連れて、後で絶対旧校舎に向かうから! みんなは先に行ってて!」
「バカ! お前一人でどうにかできるかよ!」
四人がハリーノを追おうとすると、上空から道を塞ぐように、二体のサキュバスが颯爽と舞い降りる。そのサキュバス達の顔にムチャは見覚えがあった。
「あ、あんた達は!?」
それはあの大失敗コンパに参加していた女性陣二人、さっぱり系普通女子のフラペと、イケイケ系オシャレ女子のメリッサであった。彼女達もまた、プリムラによりサキュバスに変えられてしまっていたのだ。
舞い降りたメリッササキュバスが一歩前に進み出て、レオに熱い視線を送る。
「レオ君、この前のコンパでは先に帰っちゃってごめんね。私本当はね、あなたの事シャイですごくカワイイって思ってたの」
「そ、そうなんすか!?」
メリッササキュバスは色っぽく歩きながら、更にレオへと近付いてきた。
「だからぁ、私といい夢見ましょうよ」
「い、いい夢!?」
「そう、永遠にね……」
色気溢れるメリッサの魅力に囚われて動け無くなっているレオに、メリッサの手がゆっくりと伸びる。すると。
ガシッ
レオへと伸びるその腕を、素早く掴んだ者がいた。
「り、リャンピン」
リャンピンは掴んだメリッサの手を払うと、顎の先端を僅かにかすめるように掌底を放つ。すると、脳を揺らされたメリッサは眠るようにその場に崩れ落ちた。
「先輩、ご無礼」
そしてレオの耳を引っ張って怒鳴りつける。
「ちょっと! しっかりしなさいよ! さっきはカッコいい事言ってたくせに!」
「わ、悪い!」
地味にピンチだったレオは、耳を引っ張られた痛みで意識をハッキリさせ、リャンピンに頭を下げた。
一方フラペの方は、トロンの放った眠りの魔法によって、幸せそうによだれを垂らしながらグッスリと眠っている。
一同はハリーノを追うか悩んだが、背後を見ると、多くのサキュバス達が迫って来ていた。このままハリーノを追っても、サキュバス達を引き連れて行ってしまう事になる。
かなり不安ではあったが、ここはハリーノを信じて四人は旧校舎に向かう事にした。
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