ニパとマリーナのお泊まり会3

「ちゃんと練習しておけば、いざ告白する時になってアワアワしなくて済むでしょ?」

「う、うん」

「じゃあ、やってみよう」


 ニパにそう言われ、マリーナは戸惑いつつも覚悟を決める。ニパはスッと目を閉じ、キリッとした表情を作ると、マリーナの目を見た。


「ぷふっ」


 ニパのキリッとした顔を見て、マリーナはなぜか噴き出す。


「ちょっとー、何で笑うの?」

「ご、ごめん。なんか笑っちゃった」

「ダメダメ、真面目にしなきゃ練習にならないよ! テイク2ね」


 そう言って、ニパは再び表情をキリッとさせる。


「やぁ、俺はイケメン」

「ぶふぅ!」


 マリーナは再び噴き出した。


「マリ〜ナ〜」


 ニパが頬を膨らませると、マリーナは毛布に顔を埋めて肩をプルプルと震わせる。箸が転げても笑う年頃とはよく言ったものだ。


「だって! ニパちゃん笑わせにきてるでしょ! ズルイよー」

「へへへ、バレたか。今度こそ本番ね。テイク3」


 マリーナが落ち着くのを待ち、ニパは三度表情を作る。今度はさっきよりキリッとさを抑えた、程よく真面目な表情だ。


「やぁ、マリーナ」

「こ、こんにちは」

「こんにちは、いい天気だね」

「は、はい。本日はお日柄も良く、誠にお日柄も良く、お日柄もいいですね」

「で、俺に用事ってなんだい?」

「あ、あの、その……」

「どうしたんだい?」

「あのですね、その、私……」

「俺に言いたい事があるんだろう?」


 ニパはマリーナにグイッと顔を近づける。


「ひあぁ……」

「かわいいよ、マリーナ」

「へあぁ!?」

「さぁ、言ってごらん」


 マリーナの顔にニパの酒臭い吐息が当たる。マリーナはなぜか無性にドキドキしてしまい、アルコールで赤くなった頬を更に赤く染める。


「わ、私は、参謀の事が……」

「え?」


 マリーナの言葉を聞いて、キリッとしていたニパの表情が素に戻った。


「参謀? 参謀って、もしかして……」

「ひ、ひあぁぁぁあ! 言っちゃった!」

「マリーナの好きな人って、ムチャさんなの!?」

「ひあぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


 思わず想い人の正体を口走ってしまったマリーナは、ニパから毛布を剥ぎ取ると、その毛布を頭まで被って貝のように丸くなる。


「ねぇねぇ! ムチャさんなの? マリーナはムチャさんが好きなの!? 教えてよーマリーナー!」

「そんな、そんな、ちが、ちがうよー!」

「そっかぁ、そうなんだぁ! へぇー、へぇー!」


 テンションうなぎのぼりのニパは、丸くなったマリーナに覆いかぶさり、先程以上に目をキラキラと輝かせる。そしてマリーナの背中にスリスリと頬ずりをした。


「いいねぇ〜いいねぇ〜」

「だ、誰にも言っちゃダメだよ」

「言わないよ、絶対言わない! 絶対ないしょにする!」


 それを聞いてマリーナは毛布からヒョコッと顔を出す。


「ホントにー?」

「本当本当! で、ムチャさんのどこが好きなの? 教えて教えて!」


 ニパはかぶりつく様な勢いでマリーナを問い詰める。


「どこがって言われても……優しくて、面白くて、いい人だし、後は……わからないけど」

「うんうん、わかるよ、よーくわかるよー。で、いつから好きになったの?」

「あのね、前にこんな事があったの」


 マリーナは以前あった事を語り出した。

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