クリバー学園の怪談20
その後。
一連の騒動が落ち着き、ムチャ達一行は旧校舎の玄関ホールに集まっていた。目が覚めたムチャはなぜか頭にたんこぶができている事に首を傾げたが、皆は目を逸らして真実を語ってはくれなかった。
ヨチはムチャやニパなど、まだ自己紹介をしていなかった面々に挨拶をし、勝手に旧校舎に入った事に対するお説教をした。皆はヨチに頭を下げて謝り、こんな肝試しはもうこりごりだとしっかり反省する。ムチャだけは何が起こったのかよくわかっていなかったが。
旧校舎からの帰り際、ヨチは皆に言った。
「その……勝手に入るのはダメだけど、たまには遊びに来ていいからね」
どうやらヨチは久しぶりの来客が嬉しかったようだ。
「うん、また来るよ。ね?」
トロンはそう言って皆を振り返る。皆は苦笑いを浮かべたが、やがて次々と頷いた。
「今度来る時は美味しいお紅茶を持って来ますわ」
「本が好きなら、オススメの小説を持って来るよ」
「もうネコの呪いは勘弁だけどね」
「新ネタができたら見せに来るよ」
「えーっと、私もプレグのお菓子とか持ってくる!」
「ひ、一人じゃなければ、き、きますぅ」
皆の言葉を聞いて、ヨチは照れたように小さく笑った。
「友達、沢山できちゃったな……」
生前いじめられっ子だったヨチには、こんなに沢山の友人ができるのは初めてだったのだ。
こうして、ムチャとトロンに幽霊の友達ができた。
旧校舎からの帰り道、リャンピンがポツリと呟く。
「そう言えば、エリーって何?」
それを聞いて、エスペリアとハリーノの足がピタリと止まる。
「え、何だ? エリーって?」
猿になっていたムチャは、ハリーノがエスペリアをエリーと呼んだのを聞いていなかったのだ。
「確かに、エリーって呼んでたね」
トロンはウンウンと頷く。
「え、何? もしかして何か進展しちゃったの?」
リャンピンがニヤニヤしながらエスペリアの顔を覗き込むと、噂の二人は顔を赤くしながらそっぽを向いた。
「な、なんでもありませんわ。ただのあだ名よあだ名」
「そうだよ。ね、エリー」
「ちょっと! 気安く呼ばないでよ!」
そんなハニーレモンなやり取りをする二人を見て、ムチャとトロンもニマニマと笑みを浮かべる。
「ほうほう、この二人をどう見ますか? トロン女史」
「これはこれは、まぁ、アレですな。もう完璧にアレですな」
先輩達の会話を聞き、ニパとマリーナも事情がわからないなりに何かを察したようだ。
「はえー、あの二人そういうアレなんだねー」
「大人だねぇ」
「ゴホン。愛しているよ、マリー」
「ひぁぁ……参謀、じゃなくて、ニパ先輩!」
「チューだよ、マリー」
「ひぁぁぁあ! ま、まだ早いですよぉ!」
なんてやり取りをしているこちらの二人には、どうやら色々とまだ早いようだ。
皆にヤイヤイ言われて、エスペリアは更に顔を赤くしてプルプルと震えだす。
「そ、そ、そんなんじゃないわよー!!!!」
エスペリアの照れはなぜかビンタとしてハリーノに炸裂した。ビンタを食らいながら、なぜかハリーノは少しだけ幸せそうな顔をしていた。
その頃、旧校舎二階の廊下では。
「うーん……あれ? みんなどこ行ったんだ? おーい。リャンピンー? ムチャー? おーい」
ここにまた、新たなるボッチが生まれようとしていた。
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