クリバー学園の怪談16

「で、何が起こってるの? その半透明な女の子は誰?」

 トロンはハンカチで拳を拭うリャンピンに、ヨチの紹介とリャンピンに何が起こったのかを説明した。

「なるほどね、やっぱり入っちゃダメなとこには入っちゃダメな理由があるのね。ヨチさんごめんなさい」

「ううん、無事に戻れて良かったわ。あの保管庫にはもっと強力な呪いのアイテムも沢山あるから」

「じゃあ、後はムチャとエスペリア達を見つけて、保管庫を片づけたら帰ろうか」

 鼻血を流しながら昏倒しているレオを除いた三人は頷き、この場にいない三人を探しに行こうとしたその時である。


 キャー!


 下階の方から絹を裂くような少女の悲鳴が聞こえた。それを聞いたトロンはリャンピンを見る。

「今の声って……」

「マリーナの声!? なんで!?」

 三人はレオを置き去りにして駆け出した。


 その頃校舎の一階では、突如現れてマリーナを誘拐した謎の生物をニパが全速力で追いかけ回していた。

「まーてー! マリーナを返せー!」

 謎の生物はマリーナを抱き抱えているにも関わらず、半獣のニパでも追いつけぬ程のスピードで廊下を駆け抜けて行く。

「ひあぁぁぁぁあ! ニパちゃぁぁぁぁん!」

 マリーナは恐怖のあまりに泣き叫びながら謎の生物の背をバシバシと叩くが、謎の生物はそれをものともしない。

 すると、謎の生物の前に三階から下りてきたトロン達が現れた。

「あー! トロンさん、そいつ止めてぇ!」

 ニパが叫ぶと、トロンは杖に魔力を込めて廊下を塞ぐように障壁を張る。目の前に魔力の壁が現れ、謎の生物はブレーキをかけてピタリと足を止めた。

「光よ」

 トロンの杖から光が放たれ、ニパを攫った生物の姿が明らかになる。


「え? 何で?」

 その姿を見て、トロンはポカンと口を開けた。

 光に照らされて明らかになった謎の生物の正体は……


「ムチャ、何してるの?」


 そう、なんとムチャであった。


「うきゃーっ!!」


 ムチャはマリーナを抱えたまま、歯をむき出しにして奇声をあげた。

「あ、アレはまさか!?」

 奇声をあげるムチャの様子を見て、ヨチは目を見開く。トロンはヨチに問いかける。

「もしかして、あれも呪い?」

 ヨチはゆっくりと頷く。

「アレは……ボッチ猿の呪いよ!!」

「ボッチ猿」その聞き慣れぬワードに、その場にいた一同は首を傾げた。

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