クリバー学園の怪談13

「でも、みんなどこに行ったのでしょうね。一階にも誰もいませんでしたし……」

 ハリーノは一つ一つの教室を覗き込みながら、旧校舎二階の廊下を進む。そして、後ろからついてくるエスペリアに声をかけた。


「私が知るはずありませんわ。一階と二階にいないなら、それより上の階にいるに決まっているでしょう?」

「それはそうですけど、さっきどこかで悲鳴のようなものが聞こえましたし、もしかしたら何かあったのでは」

「何かって何よ?」

「幽霊に遭遇したとか……」

 ハリーノの言葉を聞いてエスペリアは一瞬固まる。


「そ、そんなものこの校舎にいるわけないでしょう。ここはベローバ教頭が管理しているのだから、もしいたらとっくに追い出されているわよ」

 むしろそのベローバがこの校舎に幽霊を住み着かせているとは、エスペリアは夢にも思わなかった。

「でも、もしいたとしても大丈夫です! 僕がエリーをお守りしますから!」

「だからそのエリーってのは恥ずかしいからやめてちょうだい!」

 エスペリアは差し出されたハリーノの手を払いのける。二人の距離はだいぶ縮まったようだが、エスペリアにはどうやらまだ照れがあるようだ。


「それに、あなたは感知魔法は得意だけど、攻撃魔法も障壁魔法も苦手でしょう? どうやって私を守りますの? そもそも幽霊に攻撃魔法が効くのかわからないけど」

「それはですね、実は……あっ」

 ハリーノは何かを言いかけて、閃いたように声をあげた。

「どうしましたの?」

「そうだ、感知魔法を使えばみんなの居場所がわかりますよ」

「あ、それもそうですわね。でも、肝試し感が薄れてしまいますわ」

「まぁ、一応みんなが無事か念のためという事で」

 そう言ってハリーノは目を瞑り、集中して杖に魔力を込め始める。

「この校舎内にある命の火の在り処を示せ……」

 そして呪文を唱えると、杖の先端からエコーのように放射状に魔力の光が放たれた。


「うーん……この強い魔力はトロンさんかな。何で一人でいるんだろう……これは、レオとムチャかな。あれ? 一階にも二人いる。そして……ん!? 誰か……いや、何かが凄い速さで近付いてきます!」

 感知魔法により何者かの気配を感じ取ったハリーノは、素早くエスペリアを背に庇い、辺りを見渡した。魔法の光で照らしているとはいえ、旧校舎の廊下は長く、奥までは見通す事はできない。

「ハリーノ! あれ!」

 エスペリアがハリーノの袖を掴み、ハリーノが見ている方と反対側の廊下の奥を指差す。ハリーノがそちらを見ると、暗い廊下の奥には、ギラリと光る双眸があった。

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