クリバー学園の怪談8
時は数分前に遡る。
リャンピンとトロンは、トロンの杖から放たれる光を頼りに校舎内を探索していた。
二人は四階の教室を一つ一つ覗いて回り、きゃいきゃい言いながら古い校舎の不気味な雰囲気を楽しむ。
そして二人は一つだけ施錠されている扉を見つけた。扉のプレートを見ると、そこには「保管庫」と書かれている。
「ねぇ、何の保管庫かな?」
「何だろう?」
好奇心旺盛な二人は、トロンの魔法で鍵を開けて中に入った。
するとその保管庫には、箒などの掃除用具や、沢山の書物、その他雑具などが乱雑に棚に並べられていた。
「ただの倉庫みたいだね」
リャンピンはあちこち見渡しながら、保管庫の中を歩き回る。するとトロンが、棚にあった人形を見つめながら言った。
「なんか、魔法の気配がする」
「魔法?」
「うん、ここにあるもの一つ一つから魔法の気配がする。触らないほうがいいかも」
「えー、じゃあ、これ全部魔法の道具で、この教室は魔法具の保管庫なのかな」
「そうかも。変な道具があったら危ないし、出ようか」
二人が保管庫から出ようとした時である。
……ゃぁぁぁぁぁ
どこか遠くから悲鳴のような声が聞こえた。
リャンピンはビクッと肩を震わせ立ち止まる。
「い、今の何?」
「ムチャの声だった」
「えー……何かあったのかな?」
「行ってみようか」
二人は顔を見合わせ、再び保管庫から出ようとした。すると。
ダメ……
ふと、女性の声が聞こえた気がして、リャンピンはキョロキョロと辺りを見渡す。
「トロン、何か言った?」
「ううん。何も言ってないよ」
「でも、何か聞こえたような……」
入っちゃ……ダメ……
今度はハッキリと声が聞こえ、リャンピンはトロンの袖にしがみついた。
「ひいっ! やっぱり何か聞こえたよ!」
「うん、私も聞こえた」
すると二人の目の前に、床からスーッと生えてくるように、青白いスケルトンな少女が姿を現わす。
「ここには……入っちゃダメ!!」
先ほどの声は目の前に現れたスケルトンな少女が発したものだったのだ。
「で、出たぁ!!!」
リャンピンは驚き、トロンの袖から手を離し、後ろに飛び退く。すると、飛び退いたリャンピンは背中を棚に打ち付けた。
ガラガラガラガラ
リャンピンが背をぶつけた棚からは、埃と共に乱雑に積まれた道具が次々と落下し、リャンピンの頭上に降り注ぐ。
「きゃあ!」
リャンピンはすっ転び、落ちてきた道具に埋もれてしまった。
「リャンピン、大丈夫?」
トロンは道具に埋もれたリャンピンに手を差し伸べる。すると。
にゃーご
道具の山の中から猫の鳴き声が聞こえてきた。
「リャンピン?」
トロンが首を傾げると、道具の山の中からリャンピンが勢いよく立ち上がる。リャンピンの手には、いつもつけているリストバンドの上から、見た事もないブレスレットがはめられていた。
「うにゃーご!!」
跳ね起きたリャンピンは、動物のように四つ脚になると勢いよく駆け出し、そのままトロンの脇を通り過ぎて保管庫を出て行った。
トロンは唖然として、その背を見送る。
後には幽霊っぽい女の子と、トロンが残された。
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