クリバー学園の怪談7
更にその頃。
幽霊らしき少女に驚いたレオは、旧校舎の三階まで駆け上がり、ふと気づくとはぐれていたムチャを探していた。
「おーい、ムチャー」
幽霊と遭遇したうえに、夜の校舎は一人で歩くと更に気味が悪く、レオは一刻も早く誰かと合流したかったが、残念ながら誰からの返事も返ってこない。
「うう……リャンピンでもハリーノでもいいから誰かいないのかよぉ」
すると、レオの背中にブルリと震えが走る。
それは幽霊と遭遇した寒気とは違う、生理的な震えであった。
「ションベン行きたい……」
ちょうどその時、レオの目の前に「お手洗い」と書かれた札がかかった扉が現れた。
「お、ラッキー」
レオは恐る恐るその扉を開け、中を覗き込む。トイレの中はほぼ真っ暗で、小さな小窓から僅かに月明かりが入ってくるだけだ。
レオは正直中に入りたく無かったが、校舎内で立ち小便をするわけにもいかないし、ムチャを置いて帰るわけにもいかない。しかも一階に下りて一人で幽霊に遭遇したら、今度はオシッコをちびってしまうかもしれない。そうなると明日からレオのあだ名は「おもらしマン」になってしまい、レオの最も恐れる灰色の青春まっしぐらである。
「……背に腹はかえられないか」
レオは覚悟を決めてトイレの中に入る。そして入り口から二番目に近い便器の前に立つと、ズボンを下ろして用を足し始めた。
「はふぅ……」
レオは一瞬だけ恐怖を忘れ、排尿の快感に酔いしれる。レオがうっとりと表情を緩めたその時。
ガタン!
「んぎゃあ!!??」
レオの背後で突然扉が音を立てた。
レオは振り返りそうになったが、悲しいかな一度出始めたオシッコは中々止まってくれない。
レオは扉から誰かが入ってくる気配を感じた。
「だ、誰だ!? ムチャか!?」
振り返りたい。しかし、やはりオシッコは止まってくれない。
レオは限界まで首をひねって扉の方を見る。
だが、そこには何もいなかった。
「な、なんだよ……」
ホッとしたレオは、中々放尿を止めないムスコに視線を戻す。
そして、悲鳴をあげた。
「あんぎゃあああああああああああ!!!!」
レオのすぐ側には何者かがしゃがみ込み、放尿を続けるレオのムスコを爛々と輝く瞳で見つめていたのだ。
「は! あ!……あひ……はひ?」
レオはパニックになりそうになったが、その瞳の持ち主に気付き、冷静になる。
その人物には、頭に二つのお団子がついていた。なんと、レオの側にしゃがみこんでいるのはリャンピンだったのだ。
「のわ!? リャンピンお前何やってんだよ!! 見るな!!」
レオは慌てて叫んだが、リャンピンは猫のような姿勢でしゃがんだまま、ジーッとレオのムスコを見つめ続ける。
「おい! おいってば!」
レオが呼びかけると、リャンピンは口を開いた。
「みゃーご」
「え?」
リャンピンの口から出たのは、猫の鳴き声であった。
「何ふざけてるんだよ! あっちいけ! バカ! 変態!」
ようやくオシッコが止まり、レオがズボンにムスコをしまおうとしたその時である。
「にゃう」
ガリッ
リャンピンの爪がレオのムスコを素早く引っ掻いた。
「んあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
レオの悲鳴が旧校舎の三階に響き渡った。
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