クリバー学園の怪談4

 うなだれるレオを尻目に、リャンピンとトロンは意気揚々と旧校舎へと入る事にする。旧校舎の入り口には当然のように鍵が掛かっていたが、トロンが魔法で事もなく開錠した。

 実はトロンだけではなく、レオにも開錠の心得があり、レオは女子の前でカッコよく鍵を開けるつもりだったのに、トロンにお株を奪われて更にうなだれる。

「じゃあね。あ、エスペリア、変なことされそうになったら叫ぶんだよ」

「また後でねー」

 リャンピンとトロンはそう言って、校舎の中へと入って行った。


「はぁーあ、色々予定と違うんだよなぁ……」

 レオはその背を見送り、大きなため息を吐く。

 レオのペアであるムチャは、純粋に肝試しを楽しみたいと思っており、別に女子と組めずとも良かったため、励ますようにレオの肩を叩いた。

「別にいいじゃねぇかよ。どうせメリッサ先輩とだったらまともに喋れなかったって」

 ムチャは地味にひどい事を言う。

「そんな事わからないだろ! お前だってハニーちゃんと一緒じゃなくて良かったのかよ!」

「だから俺とトロンはそんなんじゃ無いって! レオこそ、そんなに彼女が欲しいならリャンピンにアタックすればいいだろ? 俺はお似合いだと思うぞ」

「リャンピンは……違うんだよ! 俺はもっと女の子っぽい子がいいんだ!」

「リャンピンも気は強いけど女の子っぽいだろ? 俺はそこそこ可愛いと思うけどなぁ。ほら、レオは脚綺麗な女が好きって言ってたじゃないか」


 ムチャに言われて、レオは以前リャンピンの入浴を覗いた時の事を思い出す。湯煙の向こうに見えるリャンピンの脚は、確かに白く長く美しかった。

「だぁー! でも違うんだよ!」

 レオは癖のある髪をぐしゃぐしゃと掻き毟り、甘い回想の世界から戻ってくる。

「何が違うんだよ……めんどくさい奴だなぁ」

 いまいちよくわからない事を訴え続けるレオに、ムチャはウンザリとした顔をした。

「まぁ、ああだこうだ言っても仕方ないし、とにかく今日は普通に肝試しを楽しもうぜ」

「……おう」

 レオは渋々頷いた。


 その頃、レオとムチャを尻目に、ハリーノはエスペリアに迫っていた。

「エスペリア様! 何かあっても僕がお守りしますからね!」

「え、えぇ……男なんだから当然でしょ」

「そうですね! 当たり前です! さぁ、僕のお側に!」

 ハリーノがエスペリアに近づこうとすると、エスペリアは手を前に出してそれを制する。

「ストップ!」

 すると、ハリーノは従順な犬のようにエスペリアの言う通りに立ち止まる。

「いい事! 確かに私はあなたと、デ、デートをしましたけれど、別にあなたを特別な目で見るつもりはありませんからね!」

「わかっています! だから僕はエスペリア様の特別になれるように努力します!」

「そうよ! 今のあなたと私じゃ全然釣り合わないんだから!」

「「今の」という事はいずれは可能性があるという事ですね!?」

「そ、それは……知らないわよ!」

 二人の様子は、側から見るとまるで闘牛士と闘牛のようである。果たして闘牛のツノが闘牛士の胸を貫く日が来るのであろうか。

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