クリバー学園の怪談
「肝試しをしよう」
レオがそう言い出したのは、二連休初日の午前中の事であった。
せっかくの休日だというのに、ムチャとレオとハリーノの三人組はやる事もなく部屋でゴロゴロとしており、あまりの退屈に耐えかねたレオが、思いついたようにそんな事を言い出したのだ。
「肝試しなぁ」
ムチャは寝転がっていたベッドから緩慢に体を起こす。
「学園に肝試しするような場所なんてあるのか?」
「ある!」
ムチャの質問にレオは即答する。
「湖の向こうに、古い建物あるだろ? あれは魔術学部が昔使っていた旧校舎なんだよ。あそこには怖い噂も色々あるし、肝試しにはぴったりだ」
「でもあそこは立ち入り禁止でしょ? バレたら怒られるんじゃないかなぁ」
ハリーノが読んでいた本から顔を上げた。
「そういう決まりにはなってるけど、誰もそんな事気にしねぇよ。なんならハリーノだけ留守番するか?」
「まぁ、二人が行くなら行くけどさぁ」
こうして、三馬鹿はその日の夜に肝試しをする事に決めたのであった。
「でもよ、男三人で肝試しってのも味気ないよな」
ムチャとハリーノはレオが次に何を言い出すのか大体予想できた。
「女子を誘おう」
それを聞いてムチャはため息を吐く。
「レオお前なぁ、この前の合同コンパの惨劇を忘れたのか?」
そう、先日行われた合同コンパでは、コンパをやろうと言い出したのはレオであるのにも関わらず、レオはちっとも女子と喋る事ができなかったのだ。
「いや、あれは、その……調子が悪かっただけだ!」
「何の調子だよ!」
「む、虫歯だ!」
「急に虫歯になるかよ!」
「うるせぇなぁ! 大体ハリーノだって全然喋らなかっただろ!?」
「お前、その後のハリーノの勇姿を忘れたのか?」
それを聞いてレオはハッとする。
そう、コンパの後ではあったが、ハリーノはあのエスペリアにデートを申し込み、見事デートに持ち込んだのであった。
「とにかく! 次はうまくやるから! な?」
レオはムチャに深々と頭を下げた。それはレオがかつて見せたことの無い綺麗なお辞儀だったそうな。
「でもなぁ……俺に頭下げられても」
そう、ムチャは別に女子と特別仲が良いというわけでは無い、ムチャに頭を下げたところで女の子がポンと出てくるわけでは無いのだ。
「お前、この前コンパした三人の、フェアリーボールクラブの子と知り合いだっただろ? あの子に頼んだらまた同じ面子を揃えてくれないかな?」
恐らくレオはマリーナの事を言っているのであろう。
「できるかもしれないけど、同じ面子ってお前正気か?」
「実は、メリッサ先輩が俺の超ストライクだったんだ!」
ムチャとハリーノはあのオシャレ女子のメリッサを思い出す。確かにメリッサは垢抜けていて可愛らしかった。レオが一目惚れするのもわかる気がする。ただ、レオが彼女を攻略できるとは思わなかったが。
「まぁ、良かろう……」
ムチャは少し考え、「これでダメなら諦めるだろう」と思い、渋々マリーナを探しに行く事にした。
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