ニパの学園生活

 ニパは翌日からクリバー学園の生徒として、中等部武術学科の一年生のクラスに通う事になった。

 因みに、ニパの入学は急な事であったので、女子寮の部屋が用意できておらず、ニパはプレグに当てがわれた職員寮の部屋からの通学となる。

 プレグはニパが集団生活に馴染めるか心配していたが、ニパは持ち前の明るさとコミュニケーション能力ですぐにクラスメイト達と仲良くなった。

 午前中の学科の授業は、正直チンプンカンプンであったが、午後からの武術学科の授業では半獣人の身体能力を活かして存分に活躍した。しかし、近接格闘術の授業は良かったのだが、選択武器の授業の時には少し困った。ニパはなにぶん武器を振るった事など無いのだ。その日はスタンダードな直剣を練習してみたが、いまいちしっくりとこなかった。


 そして放課後になり、ニパが校内をぶらぶらしていると、校庭が見える土手で体育座りをしてうなだれている少女を見かけた。ニパの記憶によると、彼女は学科は違うが、同じクラスの女子生徒だったはずだ。

 ニパは少女の背後から声をかけた。

「どうしたの? お腹痛いの?」

 ニパの声に少女が振り返る。

「えーと、確か……ニパさんでしたよね。いえ、お腹が痛いわけじゃ無いんです。すいません」

 少女はそう言うと、深いため息をついて、またうなだれた。

「何かあったの?」

 ニパはこういう時、落ち込んでいる人を放っておけない性分である。ムチャとトロンと出会った時もそうであった。

 少女はチラリとニパの顔を見る。そしておずおずと語りだした。

「私、今部活に入ってるんですけど、作戦参謀に選ばれて困ってるんです」

「作戦参謀!? なんか凄いんだね!」

「凄くなんか無いです。たまたま指名されただけで……私亜人種なのに、体力は人並み以下で、水魔法が得意な事以外は何も取り柄無いし、それなのに作戦参謀に指名されてしまって、プレッシャーが……」

 少女は再びため息をついた。

「そうなんだ。指名した人も、ちゃんとあなたの気持ちとか考えて指名したらいいのにね。ひどい人だね!」

「いえ、前参謀達はいい人達なんですけれども……そう言えば、ニパさんも亜人種でしたよね?」

「うん、私はハーフだけど、お父さんがウルフマンなの!」

「実は私もなんです。お母さんが人魚でお父さんが半魚人なんですよ」

「そうなんだ! 私達仲良くなれるかもね! あなた名前は?」

「私、マリーナって言います」

「よろしくねマリーナ! 力になれるかはわからないけど、困った事があったら相談に乗るよ!」

 こうして、ニパとマリーナは友達になった。


 後にポセイドン・マリーナと呼ばれるようになったマリーナ・ピチョンはインタビューで語る。あの頃、とある友人の支えと励ましが無ければ、今の私は無かったであろう、と。

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