そして奴らもやって来た3
「でも、まさか二人もこの学校に来てたなんてびっくりしたよー」
ニパから話を聞いたムチャとトロンは、ニパを連れて職員室へと向かう。三人が職員室の扉の前に立つと、中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「えぇ……はい……いえ、私に責任がありますので……では、明日からよろしくお願いします」
ムチャが少しだけ職員室のドアを開け、首だけを突っ込み、中をこっそり覗き込むと、ちょうどベローバと話を終えたプレグがこちらへと向かって来るところであった。
プレグと目が合ったムチャは、ニヤリと意地悪そうに笑う。
「よう、プレグ先生」
ムチャの顔を見て、プレグの足がピタリと止まる。
「なんであんたがここにいるのよ」
「プレグ先生、人身事故とはいけませんなぁ。芸人は安全第一ですぞ」
プレグがドアノブに手をかけてギュッと押すと、ムチャは顔面を挟まれて呻いた。
「なーんであんたがここにいるのって聞いてるのよ!」
プレグがふと気がつくと、ドアの隙間からトロンとニパの姿が見えた。
「あら、トロンもいたのね」
こうして運命のイタズラにより、再び四人は集ったのであった。
「なるほどねぇ、学校に生徒として紛れるなんてマニラも考えたわね」
校内のカフェのテーブルで紅茶を飲みながらプレグが感心したように言った。
「でも、トロンレベルの魔法使いならこの学校で教わる事なんて無いんじゃないの?」
確かに、トロンの魔法はそこらの魔法使いとは比べ物にならないレベルである。魔法の部類によってはこの学園の教師よりもハイレベルな魔法も使える。しかし、トロンは首を横に振った。
「そんな事ないよ。使った事ない魔法とか教えてくれるし、召喚魔法とか」
トロンはそう言うと、チュートロを召喚してみせた。
「いやー! 何これ可愛い!」
ニパはチュートロを見て目を輝かせる。
「チュー?」
テーブルの上に召喚されたチュートロは、初顔のニパとプレグを見比べると、プレグの方に歩み寄り、ピョンとジャンプする。
「わっ! 何この子!?」
チュートロはプレグの胸の谷間に着地し、もぞもぞと身を埋めた。
「この子、オスなの?」
「召喚獣だからわからない」
「スケベネズミだな」
「ムチャみたいだね」
「おい」
トロンがプレグの谷間からチュートロを引っ張り出すと、チュートロは不満そうな顔をしていたが、ニパの掌に乗せてやると、大人しくクルリと丸まった。
「でも、プレグがこの学校に通ってたってのも驚きだな」
「私は実家で疎まれてたから、全寮制のこの学校に押し込まれたのよ。まぁ、中等部を卒業したら無理矢理連れ戻されたけどね」
「へぇー、よっぽどの悪さしたんだろうな」
「してないわよ! これでも成績は学年一位だったんだから!」
プレグが実家に連れ戻されたのは、プレグの妹のフロルに病気が見つかったからであった。
プレグの両親はおてんばなプレグに見切りをつけ、大人しく従順なフロルに家督を継がせようとしていたのだが、そのフロルに病気が見つかったためにプレグを実家に呼び戻したというわけである。
「ま、なんにせよ生徒には手ぇ出すなよ」
「うるさい、エロガキ!」
プレグはヒールの爪先でムチャの脛を蹴飛ばした。
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