そして奴らもやって来た2
約二ヶ月ほど前、ムチャとトロンがアレルの街から旅立って数日後に、プレグとニパもアレルの街から旅立った。
そして行く先々の町でショーをしながら、西へ西へと向かっていた。
そんなある日の事、二人を乗せた馬車が、森の中の街道を進んでいると、御者台で馬車を操るプレグが荷台を振り返り、ニパに話しかける。
「ねぇ、ちょっと寄り道するから」
プレグがそんな事を言い出すのは珍しい。
「え? どこに寄るの? 昔のオトコのとこ?」
「違うわよ。あんたそういうの誰に習ったのよ。恋愛小説の読みすぎじゃないの?」
「じゃあ、どこに寄るの?」
プレグは荷台に地図を放り投げる。ニパがそれをキャッチすると、地図には現在地から程近い地点に○印がつけられており、そこには「クリバー学園」と書かれていた。
「学園? 学校に行くの?」
「そうよ。私の母校なの。近くまで来たからちょっと顔出そうかと思って」
「へぇー、プレグも学生の頃があったんだねぇ」
ニパの何気ない言葉にプレグは額に青筋を立てる。
「あるわよ! 今でも制服着たら私だって学生で通る自信があるわ!」
「えー、それはちょっと……制服って若い子が着るモノでしょ?」
「私はまだ若いわよ!」
プレグは歯をむき出して荷台のニパを睨みつける。
「でもプレグが制服着たら……あ、私が貧民街に住んでた頃ね、娼館で働いてたお姉さんが近くに住んでて、たまに学生みたいな制服姿で仕事に行ってたんだけど、あんな感じになるんじゃないかなぁ」
それを聞いてプレグはブチギレた。
「あんたいい加減にしなさいよ! このジャングル娘! 全裸に剥いて森に捨ててあげようか!?」
プレグは馬の手綱から手を離し、荷台のニパへと掴みかかる。するとニパは首を締め上げられながら、馬車の前方を指差した。
「プレグ! 前! 前ー!!」
プレグが振り向くと、木陰から人影が馬車の前に飛び出して来た。プレグが慌てて手綱を引くが間に合わない。
ズドン
飛び出した人影は、馬車に轢かれて吹っ飛んだ。
プレグは馬車を止め、御者台から飛び降り、道に倒れている人影に駆け寄る。その背後からニパもついてきた。
馬車に轢かれた人影は、まだ若い二十代半ば程の男性であった。外傷は見られないが、気絶しているのか死んでいるのか、ピクリとも動かずに道に横たわっている。
「あわわわわわ……プレグがやっちゃったぁ!!」
「は、半分はあんたのせいよ! ちょっと、あなた大丈夫?」
プレグが倒れた男性の肩を揺すると、男は小さく呻き声をあげて目を覚ました。
「よかった……」
プレグは殺人犯にならずに済んだ事を安堵した。
そこからは掻い摘んで話そう。
馬車に轢かれた人物は、クリバー学園の新米教師で、森に薬草を採集しに来ていたそうだ。
プレグは彼を荷台に乗せ、ニパは彼が乗ってきていた馬に乗り、クリバー学園へと向かう。プレグは久々の母校に到着するなり、彼を医務室に運び、かつてお世話になった事のある保険の先生の医療魔術師に頭を下げた。そして診断の結果、彼は右足がポッキリ折れており、しばらく入院が必要だそうだ。あまりにポッキリ折れているために、魔法の治療法でも時間がかかるそうだ。
プレグはそのことについて、現在教頭であり、以前プレグの担任であったベローバに会いに行き、謝罪した。
深々と頭を下げるプレグにベローバは提案した。
「じゃあ、彼の代わりにしばらく先生やってちょうだい」
「……え?」
「あ、お弟子さんは生徒として通えばいいわ」
「わーい!」
これが、プレグとニパがクリバー学園にいる事情の全てである。
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