奴はどこでもやって来る3

「ケセラ!!」

 ムチャが目覚めた時、既に日は高く昇っていた。

 ムチャの大声で、レオとハリーノは目を覚ます。

「うるせぇなぁ」

「どうしたのムチャ?」

 ムチャは寝ぼけ眼を擦る二人には目もくれずに部屋の中を見渡すが、そこにケセラの姿はなかった。そしてパジャマを脱ぎ捨てて、自らの胸元を見る。確かにそこにあったはずの以前ケセラに付けられた、サキュバスの刻印であるキスマークも綺麗さっぱり消えていた。

「あいつ……」

 ムチャは上着を羽織り、窓から飛び出すと、女子寮に向かって駆ける。すると、道の反対側からパジャマ姿のトロンが歩いて来るのが見えた。

「トロン! お前の所にも来たか!?」

「うん」

 トロンは眠い目をこすりながら頷く。

 ムチャはトロンのパジャマの胸元をはだけさせたが、やはりそこにもケセラのキスマークは無い。

 次の瞬間、当然ムチャはトロンのビンタを食らったが、今はそれどころでは無かった。

 それから二人は朝食も取らずに、ケセラの魔力を探ったり、痕跡を探したりしたのだが、結局ケセラに関する手掛かりは見つからなかった。


 それから二人は制服に着替え、学校へ向かう事にする。学校に向かいながら、二人は今後について話をした。

「私達の所にケセラの主人が現れるって事は、私達は学園を離れた方がいいのかな?」

「それは俺も思った。でもケセラの主人は俺達に「お会いしたい」って言ってたんだよな。事情はわからないけど、俺達に危害を加えたいってわけじゃ無いと思う。それに、ケセラが仕えている主人なら、そんなに悪い奴じゃ無い気がするんだ」

「それなら、待ってる?」

「あぁ、その時にケセラにも会えるかもしれないしな」

 二人はその後も話し合い、まだ暫くはクリバー学園に滞在する事を決めた。


 そしてその日のホームルームで、学園祭の開催が来月に決まった事を教師が告げた。

 果たして二人は、学園祭の舞台で無事お笑いを披露する事ができるのであろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る