三馬鹿と合同コンパ5

「ちょっとタイム!」

 ムチャはそう言うとそそくさと席を立ち、レオとハリーノの手を引いて、トロン達に見られぬようにトイレに駆け込んだ。

「お前ら、見たか」

 レオとハリーノはブンブンと首を縦に振る。

「まずいだろ!」

「俺は別に……」

「僕もそんなに」

 二人の気のない言葉にムチャは頭を抱えた。

「だからさぁ、別にムチャとハニーちゃんは付き合ってる訳じゃないんだろ? 普通にお茶してるだけだって言えば大丈夫だって」

 レオにそう言われると、ムチャも別にまずい事ではないような気がしてきた。しかし、なんとも言えぬ罪悪感がムチャの心を包み込んで離さない。

「と、とりあえず……場所を変えよう。お前ら全然話さないし、散歩でもしながらマンツーマンに持っていけば話さざるを得ないだろ」

 それを言われるとレオとハリーノは何も言えない。

 彼ら自身も自分があんなに女子と話せないとは思っていなかったのだ。オウムと話した方がまだ盛り上がるであろうレベルのトークスキルだ。

「うーん……仕方ねぇな」

 二人は渋々と了承する。

「じゃあ、俺がみんなの分会計してくるから、お前らは女子を……いや、お前らじゃ喋れないからダメだ。俺がなんとか見つからないように連れ出すから、ハリーノとレオで会計してきてくれ」

 会議の終わった三人は、ソーッとトイレのドアを開けて外に出た。ハリーノとレオはサッとレジに向かい、ムチャはオープン席へと向かう、そして絶望した。


「私達、参謀一号先輩とお茶してたんですよ」

 マリーナ達は、トロン達三人と相席して仲良くおしゃべりをしていた。


(おんぎゃあああああああ!!!!!)


 ムチャは声にならない叫び声をあげる。

 すると、トロンが首をグルリと回してムチャを見た。ムチャの心臓が凍りつく。しかし、見つかってしまったからには逃げるわけにはいかない。

 ムチャは平然を装い、颯爽と席に戻る。

「や、やぁ、君達も来ていたのカ」

 ムチャの言葉はなぜかカタコトであった。

 トロンはいつものトロンとした目でムチャを見つめる。ムチャの心臓がバクバクと高鳴った。

 すると、ムチャを見つめていたトロンが口を開く。

「ムチャ、女の子の友達もできたんだね」

「へ?」

「私ね、ムチャが女子に嫌われて無いかちょっと心配だったの。でも、お茶するような友達ができてよかったね」

 トロンの優しい言葉がムチャの胸に突き刺さる。

「あ、あぁ、まぁな。そりゃ俺だって女友達くらい……」

 すると、オシャレ女子メリッサがスッパリと言った。

「友達じゃないよ。私達コンパしてたの」


(おんぎゃあああああああああ!!!!)


 ムチャはまたしても声にならぬ叫び声をあげる。

「コンパ……って何?」

 トロンは聞き慣れぬ言葉に首を傾げた。

 ムチャがふと、リャンピンとエスペリアを見ると、二人は軽蔑の眼差しでムチャを見ている。

「そうでしたの。では、邪魔をしてはいけないので私達は別の席へ移りましょう」

「そうだね。変態がうつると嫌だしね。あ、マリーナに変なことしたら許さないからね」

 そう言うとエスペリアとリャンピンはトロンの手を引き、ムチャ達の席を離れた。


(まずいまずいまずいまずいまずいまずい……別にまずくないけどまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい……そもそも俺はコンパなんてしなくて良かったんだ。それなのにあいつらがやりたいって言うから……ていうかなんであいつら喋らないんだよ! 彼女欲しいくせに女と喋れないって意味わからねーよ! レオとか普段リャンピンと普通に喋ってるじゃねーか!)


 ムチャの脳みそが警鐘を鳴らす。

 そこに、会計を終えたレオとハリーノが戻って来た。二人は状況を察し、「あちゃー」という表情を浮かべる。

 もはやコンパはどう転んでも良い方向へは向かってくれないようだ。

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