熱血!フェアリーボール!18

 その後、テキム学園チームのラフプレーはオガールの指示によりピタリと止まった。

 リャンピンがふとベンチを見ると、負傷して医務室に運ばれていたはずのマリーナ達が戻ってきていた。

 リャンピンはタイムを取り、ベンチへと戻ると、マリーナ達は先程の傷が嘘のように癒えている。リャンピンが何があったのかを問うと、マリーナ達は口を揃えて「フェアリーボールの妖精が治してくれた」と意味不明な事を言った。

 そして、選手交代でクリバー学園チームは元のレギュラーメンバーへと戻り、試合は再開された。

 レギュラーメンバーに戻り、相手のラフプレーが無くなったとはいえ、やはりテキム学園チームの一軍は半端な強さではない。しかし、重りを外したリャンピンと、メンバーの復帰で闘志を取り戻した皆の力で、何とか相手の得点を防ぎ続ける。

 そして、こちらも得点が決められぬまま、試合終了の時間が近付いていた。


 何度目かのテキム学園チームの攻撃を止めたリャンピンがふと時計を見ると、プレイ時間は後数秒しか残されていなかった。ハーフラインからゴールまで、相手ディフェンダーを躱しながら数十メートルを駆け抜けてゴールを決めるのは厳しいであろう。もしこのまま時間切れで延長戦に持ち込まれれば、向こうはメンバーを入れ替えてきて、残りの体力の差で敗北は濃厚だ。

 リャンピンは一か八かの賭けに出る事にした。

 ホイッスルと同時にハーフラインからのシュート。

 それはプロの試合でも実際にあったプレイである。しかし成功率は極めて低い。だが、リャンピンには他に思いつく手段はなかった。

 リャンピンはハーフラインに立ち、ホイッスルが鳴る前にボールに気を溜める。仲間達もリャンピンの意図が理解できたのか、リャンピンのシュートを邪魔させぬように、リャンピンを囲むフォーメーションをとった。


 そして、ラストプレイのホイッスルが鳴る。


 敵ディフェンダーが駆けてくる。

 味方がそれをブロックする。

 その隙にリャンピンは腕を思いっきり振りかぶり、遥か遠くに見えるゴール目掛けてボールを放った。

 ボールは凄まじい勢いで回転しながら、僅かに山なりに飛んでゆく。

 敵マジッカー達が慌てて魔法を放つが、当たらない。

 シュートコースはゴールに入るかゴールポストに当たるかギリギリのラインだ。

 競技場の皆が祈った。


 入れ!

 入るな!


 キーパーが跳ぶ。

 伸ばされた指先が僅かにボールに触れる。

 しかしボールは止まらない。

 ボールはゴールへと……


 カツン


 入らなかった。

 ボールはゴールポストに弾かれる。

 ゴールにギリギリ入るはずのシュートは、キーパーの指先に触れた事で、ほんの僅かに軌道が変わってしまったのだ。

 リャンピンは頭を抱えた。

 その時である。


 バチュン


 ホイッスルと同時に走り出していたマリーナが、口から水鉄砲を放った。

 水鉄砲はポストに弾かれたボールに当たり、ゴールの輪へと押し込む。


 試合残り時間0秒。


 ピピーッ!!


 得点を知らせるホイッスルと、試合終了を知らせるホイッスルが同時に鳴り響いた。

「試合終了、2対1で、クリバー学園チームの勝利です」

 競技場に歓声が響き渡る。


「うおっしゃあ! やりましたわ!」

 観客席のエスペリアは、らしく無いガッツポーズをして、隣に座るレオに思わず抱き着く。


 クリバー学園チームのメンバーは、マリーナに向けて一斉に駆け寄り、呆然としているマリーナを天高く胴上げした。

「あわわわ! 怖い! 胴上げ怖いよぉ!」


 こうして、クリバー学園フェアリーボールクラブは、テキム学園チームに初勝利を収めたのであった。

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