熱血!フェアリーボール!17

 その頃、テキム学園側のベンチでは、監督であるオガールが荒れに荒れていた。オガールが椅子がわりに座っているのは前半戦まで試合に出ていた修行僧のような男子生徒だ。そんな事させられていればそりゃ修行僧みたいな顔にもなる。

「チッ! 一軍まで出したってのにどうなってやがる! あんな雑魚チームに負けるなんて許さねぇからな!」

「オガール監督、やはりあのお団子ガールが厄介なようですね」

「ならばあいつも潰せ! もう一度スモーク作戦Zだ!」

 その時、オガールの背後にフードを被った二つの人影が現れた。

「ん? 誰だお前ら」

 オガールが振り返ると、謎フード達が口を開く。

「僕達はフェアリーボールの妖精、フェア君と」

「リーちゃんだよ」

「あん? 何ふざけてやがる? 誰かこいつらをつまみ出せ!」

 オガールが指示を出すと、ベンチにいた選手達がフェア君とリーちゃんの周りに群がる。するとリーちゃんが、手にした大きな杖をオガールの頭へと向けた。

「我が身に宿る楽の感情よ、彼の穏やかなる記憶を呼び起せ」

 リーちゃんが呪文を唱えると、杖の先端から緑色の魔法の光が放たれる。


 ぽわわわわん


 杖から放たれた魔法の光が、オガールの頭に流れ込む。

「これは……?」

 すると、オガールの脳内に走馬灯のように昔の記憶が流れ始めた。


「オガールはボールで遊ぶのが好きだねぇ」

「オガールはフェアリーボールクラブに入ったのね。頑張ってね」

「あらあら、レギュラーになれなかったのね。気にしない気にしない。次頑張ればいいじゃない」

「まぁ、初めての試合で点を決めるなんて凄いじゃない。さすがオガールね」

「オガールがプロに? やったわね。寂しくなるけど頑張ってきなさい」

「ケガで引退? そうかい……でも、人生長いんだからきっといい事あるよ」


 気がつくとオガールは涙を流していた。

「ううっ……おふくろ……」

 オガールはガックリと膝をついて、ボロボロと涙を流し続ける。そんなオガールにフェア君が語りかける。

「かつてのあなたと同じように、彼女達も、そしてあなたのチームの選手達もフェアリーボールを愛しているのですよ。だから卑怯な事はおやめなさい」

 オガールは泣きながら頷いた。

「はい……」

 オガールの返事を聞き、フェア君とリーちゃんは納得したように顔を見合わせ、どこかへと去って行った。

 果たして彼等は何者なのであろうか。

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