熱血!フェアリーボール!12
テキムチームは自陣まで下がり、アタッカーが転倒した場所からプレイは再開される。
「ちくしょう! セコい手を使いやがって!」
テキムのアタッカーである獣人の男子生徒は悔しげに唸り声をあげた。そんな彼の肩を、テキムのキャプテンが叩く。
「気にするな、ただの奇策だ。確かにやり辛くはなったが、あの氷漬けのフィールドでは奴等も満足にプレイできまい」
しかし、彼の言う通りにはならなかった。
クリバーチームのアタッカー達は、ゆっくりな動きではありながら、氷の上を器用に慎重に滑るように移動し、転びそうになりながらもパス回しを続けてテキムチームのディフェンダー達を翻弄し始める。彼らはこの作戦のために、氷上でもある程度動けるように特訓してきたのだ。
そして、ボールを追いかける彼らを尻目に、クリバーチームのマジッカー達はテキムチーム側のフィールドに駆け込む。そしてマリーナが水を撒き、他のマジッカー達が氷結魔法で更にフィールドを氷に変えてゆく。
「まさかあいつら、フィールドを全部氷に変えるつもりか!?」
しばらく同じような光景が続き、テキムチームがクリバーチームからボールを奪った時には、フィールド全体の四分の三が氷に変えられていた。
テキムチームの攻撃になったものの、氷上での試合などした事の無い彼らは、氷に足を取られて思い通りには動けない。クリバーチームもテキムチームよりはマシとはいえ、スケート靴を履いているわけでは無いので、やはり動き辛い事には変わりはない。
その隙に、マリーナ達は更にフィールドの凍結を続ける。
お互いにツルツル滑り、転びを繰り返しながら試合は続く。それはスピーディで派手な試合を期待していた観客達から見れば、退屈な試合展開であった。
そんな試合を見ながら、ムチャとトロンはベンチでほくそ笑んでいた。
「滑る事を恐れれば前に進む事叶わず。しかし、恐れず滑ればそこに活路が生れる。これぞ笑いの奥義……「滑り芸」よ!!」
「作戦名、「みんなツルツルだよ! 泥試合大作戦!」」
二人はキリッとした顔で言ったが、作戦名はかっこ悪かった。
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