熱血!フェアリーボール!11

 ホイッスルと同時に、ボールを持ったテキムチームのアタッカーである獣人と、サポートのマジッカーが駆け出す。それを見てクリバーチームのマリーナを除く三人のマジッカーは、一斉に煙幕の魔法を発動する。

「「煙よ!」」

 三人の杖から放たれた煙幕は、みるみるうちにフィールドを侵食してゆく。視界が遮られ、テキムチームのアタッカー達は警戒して、バックステップで自陣まで後退する。

 煙幕がモクモクとテキム側まで侵食してこようとした時、テキムチームのマジッカー達が風魔法を一斉に放ち、煙幕を押し返した。

 煙幕による視界の遮りは、フェアリーボールではポピュラーな作戦であるため、強豪校であるテキムチームは当然のように対策を持っていたのだ。

 風魔法により煙幕はあっという間に押し返される。ある程度視界が開けると、テキムのアタッカー達は再び走り始めた。


 グジュッ


 彼らがフィールドのセンターラインを越えようとした時、足元に何やら嫌な感触があった。

 そう、クリバーチーム側のフィールドは、なぜかぐっしょりと湿っていたのだ。更に、彼らの肌にシットリと水気が当たる感触があった。

「……雨か?」

 テキムのアタッカーは走りながらチラリと空を見上げる。しかし、本日は雲ひとつ無い晴天である。絶好の試合日和で、雨など降りようが無い。

 風魔法により煙が完全に晴れると、謎の水気の正体はすぐに明らかになった。


 ダババババババ


 ゴール前に立つマリーナの手と口からは大量の水が放出されており、まるでスプリンクラーのように、クリバー学園側のフィールドに撒かれていたのだ。


 テキムのアタッカー達はそれを見て一瞬戸惑ったが、彼らが自チームのキャプテンを見ると、キャプテンは頷いてGOサインを出す。彼はただ足元を悪くして機動力を落とす作戦だと考えたのだ。アタッカー達も頷き、異様に濡れたフィールドに足を踏み入れ、全力で走り出した。

 その時、煙幕を掻き消されたクリバーチームのマジッカー達は、一斉にフィールドに手を当てた。そしてフィールドに向けて魔法を放つ。


「「氷結せよ!!!!」」


 すると、濡れたフィールドは芝生ごとパキパキと音を立てて凍り始めた。フィールドはぐっしょりと濡れているために、氷結魔法はみるみるうちにフィールドを氷の大地へと変えてゆく。

「何!?」

 勢い良く走っていたテキムのアタッカーは、その勢いのまま氷結地帯に足を踏み入れてしまい、ツルリと滑って勢い良く転倒した。


 ピピーッ!


「テキム学園、ボールのキープ中の転倒で、攻守交代!」


 審判の声がフィールドに響く。

 観客席からは歓声があがり、ムチャとトロンはグッとガッツポーズをした。

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