熱血!フェアリーボール!10

 競技場にファンファーレが鳴り響き、両学園の生徒達が、よく手入れされた芝生の生え揃っているフィールドへと入場を始める。

 ムチャとトロンはその様子を、クリバー学園側のベンチから眺めていた。トロンはいつのまにかクリバー学園チームのユニフォームを着ており、片手にはチームマスコットのクリオ君が描かれた旗を手にしている。どうやら楽しく観戦する気満々のようだ。

「ねぇ、本当にあれで勝てるかな?」

「うーん……わからん。けど、みんな頑張ってたし、いい勝負ができるはず……かな?」

 ムチャは正直緊張していた。「もし自分の作戦のせいで負けたらどうしよう」と考えてしまっていたのだ。

 その時、フィールドへと向かうリャンピンが、ベンチにいる二人を見てウインクをする。

「いや、きっと勝てるさ」

 ムチャはムチャにできる事は全てやった。後はリャンピン達の勝利をただ祈るしか無かった。


 フィールドの中央へ並んだクリバー学園チームの前には、強そうなオーラを放つテキム学園の生徒達がズラリと並んでいる。中にはどう見ても十代前半に見えない風貌の者や、明らかに必殺技を隠していそうな者、長年の修行を乗り越えてきた修行僧のような者までいる。彼らの背後からゴゴゴゴという書き文字が見えてきそうな迫力だ。

 対してクリバー学園チームは、なぜかちょっとだけ芸人オーラが出ている年相応な普通の少年少女達である。

(しぇ、しぇんぱい、私怖いです)

 テキム学園チームのオーラに圧され、拳をギュッと握りしめたマリーナが、隣に立つリャンピンに囁いた。

(大丈夫、私達はやれる事をやるだけよ。試合を楽しもう)

 リャンピンはマリーナに囁き返すと、相手チームのキャプテンと握手を交わす。

 そして互いのチームの選手達が審判の合図で礼を交わし、コイントスで先攻後攻を決める。

 クリバー学園は後攻であった。

 選手達はフィールドに散り散りになり、あらかじめ決めていたポジションに着く。

 すると、観客席がざわめいた。

「おい、なんだあれ?」

「変なフォーメーションだなぁ」

 クリバー学園チームのディフェンスフォーメーションは、マジッカーであるマリーナをキーパーの目の前に立たせ、なぜか全員異様にゴール側に寄ったフォーメーションであったのだ。

 観客達とテキム学園チームはそれを見て、「ビビっているのか」と思った。

 しかし、彼らの作戦は既に始まっているのだ。


 今、試合開始のホイッスルが鳴る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る