熱血! フェアリーボール!5

 その日の夜、ムチャとトロンとリャンピンの三人は、女子寮のミーティングルームを借りて作戦会議を開いていた。

 因みに男子寮は女人禁制となっており、もし女子を連れ込めばその男子は鉄の掟によりキツイ罰が与えられる。女子寮も基本的には男子の立ち入りを禁じているのだが、ロビーとロビーから程近いミーティングルームには、寮生と共に受付をすれば入る事ができるのだ。

 最初女子寮に入った時、ムチャは男子寮とのあまりの違いに口をパクパクとさせ「不公平だ……」と呟いた。


「で、相手のテキム学園ってそんなに強いのか?」

「強いよ!」

 リャンピンはムチャの質問に即答する。

「テキム学園はわりと新しい学園なんだけど、フェアリーボールの特待生を取る程にフェアリーボールに力を入れている学園なの。まず選手の層が段違いで、オフェンスとディフェンスで殆ど全部の選手を入れ替えるし、アタッカーには三人も獣人の選手を入れていて、突破力も半端じゃないの。更にマジッカーも大地魔法のエキスパートが揃っていて、彼等が次々と生み出す土壁の魔法でフィールドに迷路ができちゃうくらいよ。そうなるとこっちはシュートもパスも封じられちゃって、何もできずに負けちゃうわ」

 リャンピンはその後も数分に渡りテキム学園の凄さを語り続けた。

「なるほどな、そりゃもう勝てないだろ」

「ムチャ……」

 ムチャは軽々と匙を放り投げる。トロンは慌ててその匙をキャッチする。

「まぁ、うちのクラブはみんな趣味でやっているようなものだしね。コーチや監督もいないし。でも、みんな本当にフェアリーボールが好きでやってるんだよ。そんなに強く無いけど、他の学園とはいい勝負してるし。だから一度くらいは勝ちたいって思ったんだけど、やっぱり無理かなぁ……」

 リャンピンはションボリと頭を垂れる。

 いつも元気で明るいリャンピンのそんな姿を見ると、放って置けないのがこの二人であった。

「でもなぁ、負け戦こそ面白いって言葉もあるし、やれるだけやってみるか!」

「うん」

「本当に!? ありがとう!」

 ムチャの言葉に、泣いたカラスがもう笑った。

 ムチャは椅子から立ち上がり、力強く語る。

「実力が勝る相手には奇策が一番だ! 俺達はなんとか勝てそうな戦略を考えてみるから、リャンピン達はリャンピン達でいつも以上に練習頑張ってみてくれよ!」

「わかった! 頼んだよ、作戦参謀!」

 リャンピンも椅子から立ち上がり、ムチャとトロンと硬く握手を交わした。そしてムチャの肩書きが変態三号から作戦参謀に代わった。

 果たして、ムチャとトロンはテキム学園を破る戦略を考え出す事ができるのであろうか?

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