熱血!フェアリーボール!4

「と、いうわけで、この二人に作戦参謀としてお手伝いしてもらう事になりました」

 フェアリーボール部の部室には、先程一緒に練習をしていた部員達がズラリと並んで座っている。ムチャとトロンは皆の前に立ち、ペコリと頭を下げた。

 すると、後輩らしき小柄な女子生徒が手を上げて質問した。

「リャンピン先輩! 作戦参謀ってなんでしょうか?」

「えー、みんなもさっきの試合でこの二人の実力は見たと思うけど、彼らから何かアドバイスや戦略のアイディアを貰えないかと思って連れてきたの」

 それを聞いて、今度は先輩らしき男子生徒が口を開く。

「確かに、初心者であるにも関わらず彼らのプレイには目を見張るものがあったな。アタッカーの彼はうちのエースであるリャンピンにも引けを取らず、マジッカーをやった彼女は……なんかもうめちゃくちゃだったが凄かったな」

「そうでしょう。彼等からうちのチームに足りないものを学び、次の試合では悲願のテキム学園からの勝利を勝ち取りたいのです! では、参謀達からご挨拶お願いします」


 リャンピンが二人に挨拶を促すと、ムチャはゴホンと咳払いをして挨拶を始める。

「えー、俺が参謀一号のムチャです。 まず、今日皆さんとプレイして思った事がある」

 ムチャは勿体ぶったように皆を見渡す。

「それは一体感が足りないという事だ。フェアリーボールは例え個々の身体能力や魔力が劣っていても、戦略とパターン次第ではどんなに強い相手にでも勝てる可能性がある競技だ。しかし、どんなに良い戦略を持っていても、一体感が無ければそれを上手く活用する事はできない。だからこのチームではもっと一体感を磨くべきだ。よろしく」

 ムチャがいかにもそれっぽい挨拶を終えると部員達は感嘆の声を上げて拍手した。


 そして、続けてトロンが挨拶をする。

 トロンはムチャの真似をしてゴホンと咳払いをすると、手にした杖を床にドンと突いた。

「みんなぁ! 私が参謀になったからにはビシバシだぁ! ビシバシだよ!」

 部員達の頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。

 どうやらトロンはビシバシいくぞと言いたいらしい。

「みんな、勝ちたいかぁ!?」

 脈絡の無い突然の問いかけに、部員達がは戸惑う。

「勝ちたいかって聞いてるんだぁ」

「「お、おー」」

「声が小さい! 勝ちたいかぁ!?」

「「おー!!」」

「フェアリーボールはねぇ、一体感だよ一体感(多分)みんなには一体感が足りないよ(多分)みんな自分がムカデの足だと思ってみて。ムカデの足がみんな仲が悪かったらどうなる?」

 トロンは杖で、先程発言した後輩女子を指す。

「あ、歩けません!」

「そうだよ! 歩けないよ! だから一体感大事だよ! みんなはムカデの足だよ(適当) だから仲良くするんだよ! いいね! あ、よろしく」

 要はさっきムチャが言った事のパクリであった。

 トロンが挨拶を終えると、部員達からパラパラと拍手が起こり、トロンは頭を下げた。

「えー、じゃあ、みんなこの二人に何か質問はありませんか?」

 リャンピンが問うと、ムチャが武術学科で見た事のある男子生徒が言った。

「参謀! 一体感が大事って言ってたけど、どうやって一体感を磨けばいいんだ?」

 ムチャは首をひねり、たっぷり考えてから答える。

「それをこれから考えるのが参謀だ!」

「それはつまりノープランって事か?」

 男子生徒が不安げにツッコミを入れると、参謀二号がすかさず口を挟んだ。


一体感いったいかんだけに、それは言ったらいかん」


 部室には氷点下ブルブルブリザードが吹き荒れた。

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