熱血!フェアリーボール!3
結論からいうと、練習試合はムチャとトロンの参加したチームの圧勝であった。
オフェンスではムチャとリャンピンのペアが抜群の運動神経で活躍し、ディフェンスではトロンが魔法で相手のシュートやパスを次々と撃ち落としたおかげで、味方チームのキーパーは一度もボールに触れる事すら無かった程だ。しまいには自らに身体強化の魔法をかけて、得点にまで貢献してしまった。
「いやー、二人とも凄いね! トロンちゃんもとても初めてとは思えなかったよ! はい、これ」
練習の後、ムチャとトロンが先程座っていた土手で休んでいると、リャンピンが売店で買ったジュースを手に、二人の隣に座った。
「お、サンキュー」
「ありがとう」
二人はリャンピンからジュースの瓶を受け取り、栓を開けて美味しそうに飲んだ。
「二人がうちのクラブに入ってくれたら良かったのになぁ」
試合が終わった後、二人の活躍を目の当たりにしたリャンピンのチームメイト達は入れ替わり立ち代り二人をチームに勧誘したが、クラブに入ってしまうとお笑いに割く時間が減ってしまうという事で、二人は勧誘を断った。
「ごめんね、でも楽しかったよ」
「それは良かった」
リャンピンはトロンに微笑むと、ジュースを飲み干し、物憂げな表情を浮かべて空を見上げた。
「どうしたの?」
トロンが尋ねると、リャンピンは今度ははにかんだように笑う。
「ううん、ちょっとね。二人がいれば今度の試合勝てるかもしれないのになぁって思って」
「「試合?」」
「うん」
リャンピンの話によると、今度他校のチームとのフェアリーボールの公式戦が行われるらしい。しかし、対戦相手のテキム学園はフェアリーボールの強豪校で、これまで何度かグリバー学園と対戦した事があったが、毎回ボッコボコにされ、一度も勝てた事が無いとの事だ。
「うーん、そうなのか」
「じゃあ、試合の時だけ助っ人しようか?」
その申し出に、リャンピンは少し考えてから首を横に振った。
「ううん、ありがたいけど、一時的に助っ人を頼むのはなんだかズルな気がするから、自分達だけで頑張ってみるよ。でも、クラブに入りたくなったらいつでも言ってね!」
そう言ってリャンピンは立ち上がる。
「さて、じゃあ、私は後片付けとミーティングがあるからまたね。今日はありがと」
リャンピンは二人に手を振ると、校庭の近くにある部室に向かって去って行く。その足取りは少しだけ重たげであった。
その背中を見てムチャとトロンは顔を見合わせる。
そして互いに頷いて、立ち上がった。
「待てよリャンピン!」
リャンピンは振り返る。
「チームには入れないけど、何かできる事があれば俺達が協力するぜ!」
ムチャとトロンはリャンピンに向かい、グッと親指を立てた。
そんな二人を見たリャンピンは、目をパチクリとさせた。
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