熱血!フェアリーボール!2

「まずね、十対十で二チームに分かれて、一方の一人がボールを持つでしょ? で、ガーッって走って、バーンって投げるの。それで、相手のゴール、あの輪っかね。あれにボールを入れたら得点。あ、でもね、途中で転んだり相手チームの選手にタッチされたらダメなの。そしたら攻守が入れ替わるから、今度は守らなきゃいけないの。わかった?」

 リャンピンの説明はものすごくアバウトであった。

 というか、リャンピンは物事を順序立てて説明するのが苦手であった。

「大体わかった」

「わかったのかよ!」

 トロンの理解力も凄かった。


「でね、ここからがポイントなんだけど、ポジションによっては魔法で味方をサポートしたり、相手の攻撃を妨害したりすることができるの」

 そう、これがフェアリーボールの醍醐味である。

 フェアリーボールは攻守を入れ替えながら相手チームのゴールにボールを入れれば良いというシンプルな競技なのだが、攻守共に魔法の使用が認められているのだ。

 これにより、他の競技には無い様々な戦略やコンビネーションが生まれ、非常に見応えのある競技となっている。


「あ、でもね、魔法で相手チームの選手に直接的な攻撃したり、ゴールを障壁で囲んだりしたらダメなの。競技が成立しなくなるから」

「なるほどなるほど」

 どうやらざっくりながらトロンは競技を理解できたようだ。ルールがわかると何やらヤル気が出てきたようで、軽くストレッチをはじめている。

「じゃあ、早速やってみようよ! おーい、みんな、この二人も入れてあげてー!」

 二人はリャンピンのチームメイトにユニフォームを借りて、練習に参加してみることにした。


「じゃあ、ムチャ君はアタッカーで、トロンちゃんはマジッカーね。私も同じチームでアタッカーをするから」

 アタッカーとは、ボールを持って相手の陣地へ走り、ゴールを決めるポジションで、マジッカーとは魔法で妨害やサポートをするポジションだ。他にもゴールを守るキーパーや、相手のアタッカーを止めるディフェンダーというポジションもある。


 校庭に描かれた長方形のコートの中心に、互いのチームが一列に並び、礼をして、先攻後攻を決めるコイントスをする。ムチャ達の先攻が決まり、皆バラバラになり自分のポジションにつく。

「それでは、試合開始!」


 ピーッ


 審判役の生徒がホイッスルを吹くと、練習試合が始まった。


 まず、ボールを持っているムチャがコートの中心から勢い良く走り出す。すると、相手チームのディフェンダーの一人がムチャにタッチをしようと、腕を広げて走り寄ってきた。ムチャはそれをフェイントを交え身軽に躱し、相手のゴール目がけて突き進む。

 ムチャがディフェンダー達を躱しながら相手ゴールの近くまで来た時、ムチャの目の前に土の壁が現れた。相手チームのマジッカーが土の魔法でムチャの進行を妨げたのだ。

 方向転換をしたムチャに、相手チームのアタッカーが迫る。

 その時。

「ヘイ! パス!」

 ムチャが声のした方を見ると、同じチームのアタッカーであるリャンピンが、相手チームのゴール前まで走っていた。ムチャはボールをリャンピンの方にパスすると、リャンピンはそれをキャッチして、助走をつけながら腕を振りかぶる。

「おりゃあ!」

 そして、ボールを相手のゴール目がけて思いっきり投げた。

 ボールは凄いスピードで相手チームのゴールへと真っ直ぐに飛んで行く。しかし、リャンピンが投げたボールは相手チームのキーパーにより弾かれてしまった。そこに、壁を迂回したムチャが走りこむ。

「あらよっと!」

 ムチャは跳躍してボールをキャッチすると、そのまま空中からボールを投げてゴールを決めた。


 ピピーッ!


 得点を知らせるホイッスルが鳴り、得点掲示板に点数が刻まれる。

 ゴールを決めたムチャがカッコよく着地すると、リャンピンがムチャに駆け寄り、二人はハイタッチを交わす。

「ムチャ君やるじゃん!」

「リャンピンこそ、ナイスポジション取り!」

 二人は互いを讃え合い、なにやらスポ根をしていたが、味方陣地のトロンはボールが来ないので、退屈そうにあくびをしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る