トロンと召喚魔法
その日、魔法学科の演習場では召喚魔法の授業が行われていた。
女教師が皆の前に立ち、召喚魔法についての説明をする。
「えー、召喚魔法にも様々な種類がありますが、簡単に説明すると、その場に存在しないものを魔力によってその場に呼び出す魔法の事を召喚魔法と言います。契約を交わした精霊を召喚したり、遠くにいる人を魔法陣で呼び出したり、別空間にしまってある武器を取り出すのも召喚魔法と呼べますね。今日はその中でも一番基本的で簡単な召喚魔法を練習しましょう」
トロンは昼食に食べたカレーの味を思い出しながら、教師の話をボーっと聞いていた。
「ちょっとトロンさん、聞いていますの?」
あまりにボーっとしていたので、心配したエスペリアにツンツンと肩をつつかれる。
あの日から、エスペリア達の嫌がらせは止まり、トロンの学生生活は平和になった。エスペリアやその取り巻き達とも仲良くなり、今では一緒に昼御飯を食べたりもする。
「ん、聞いてるよ」
トロンが教師の方を見ると、ちょうどお手本を見せるところであった。
「この召喚魔法は、自らの心を召喚獣として召喚します。精霊や魔物のように、他者と契約をする必要が無いので危険性が少なくて安全な召喚魔法です。この魔法を使うには己の心を知り、向き合う事が大切です。思春期の皆さんにはぴったりの魔法ですね」
そう言うと教師は、目を閉じて集中し、教鞭がわりの杖を軽く振った。
「我が心よ、獣となりてその姿を現せ!」
すると、杖の先端から魔力の光が放たれ、光は渦巻いて豹の姿となった。
「「おー」」
その鮮やかな魔法に、生徒達からは感嘆の声があがる。
「先生って真面目そうですけど、本性は女豹なんですねー!」
一人の男子生徒が茶化すと、男子生徒達は皆笑った。光の豹は唸り声をあげてその男子生徒に飛び掛かかる。
「えー、練習をすれば召喚獣はこのように自由自在に動いてくれます。最初はうまくできないかもしれないけど、そんな時は自分の心に問いかけてみて下さいね。では、テキスト通りにやってみてください」
生徒達はテキストとにらめっこをしながら早速召喚魔法の練習に取り掛かった。
皆夢中になって杖を振っているが、中々うまくいかないようだ。魔力の光だけが形を為さずに辺りを飛び交う。
ハリーノもうまくいかないらしく、他の男子生徒達と何やら相談をしていた。
「トロンさん、一緒にやりましょう」
トロンの隣にエスペリアがやってくる。
二人はテキストを見て、その手順通りにやってみる事にした。
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