獣達の夜14

「ムチャパン」それはムチャのお気に入りの青いパンツの事である。トロンがパンツをひっくり返すと、以前トロンが魔法で書いてあげた「ムチャ」という文字が書かれていた。

「まずい」

 ムチャは自らのズボンの中を確認する。

 ムチャは先程慌てていてパンツを履き忘れていたのだ。


 トロンはムチャパンを片手に服を脱いだ所まで歩いて行くと、立てかけてあった杖を手にする。そして魔力を込めて探知の魔法を発動させた。

(逃げるぞ!)

 ムチャはレオとハリーノに合図をして、岩陰から飛び出し、洞窟の入り口へと走り出す。

 しかしすでに遅かった。

 トロンの杖から放たれた魔法の縄が、獣達の足首を捉える。

「のわっ!」

「ぐわ!」

「いてっ!」

 獣達は仲良く転倒した。

 振り返ると、そこにはいそいそと服を着る女子三人がいて、獣達は冥土の土産にその姿を目に焼き付ける。

 そして服を身につけた女子三人は、捕らえられた獣達の前に立ちはだかった。彼女達の目は座っており、何も言葉を発さない。それが逆に不気味であった。

「「あわわわわ……」」


 数分後、ボコボコにされた獣達は全裸にひん剥かれて仲良く温泉に浮かんでいた。

「なぁ、今日の事、一生忘れないよな」

 彼等はパンパンに腫れた顔面に笑顔を浮かべ、永遠の友情を誓ったのであった。


 後日談。

 ムチャはその日から一週間トロンに口を聞いてもらえず、毎日会う度に土下座をしてなんとか許して貰えた。

 そして三人には女子生徒達から三馬鹿の称号が与えられ、軽蔑される立場となった。

 三人は秘宝の正体を誰にも話さなかった。

 ある日、食堂で夕飯を食べていた三馬鹿の所に後輩である一年生の少年がやってくる。

「先輩! 男子寮に伝わる秘宝があるって本当ですか!?」

 少年に向かってムチャは微笑み、言った。


「あぁ、いつかお前も探してみろ。最高の仲間と一緒にな」


 こうして、秘宝は受け継がれてゆくのであった。

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