獣達の夜13
「何だ!?」
光を見た三人は、慌てて服と武器を脱ぎ散らかした場所に戻る。そして全裸で魔物と遭遇でもしたらたまらんと、服を拾い岩陰で身につけ始めた。
「ムチャ! それ、俺のパンツ!」
「レオ! それ僕のシャツだよ!」
「急げ急げ!」
三人が着替えていると、先程覗いていた穴から何やら人の声が聞こえてくる。
三人は手を止め、その声に耳を澄ませた。
「へー、寮の屋根裏にある魔法陣てこんな所に繋がってたんだね!」
「あの凄い臭いが染み付いてしまったから、今日はこちらの浴場で済ませましょう」
「本当に温泉だ」
三人はその声に聞き覚えがあった。
「この声は……」
三人は岩陰から顔を出し、穴の方を見る。
すると穴から、グリバー学園の制服を着た三つの人影が現れた。
湯煙の合間から見えるその人影は、三人の知っている人物であった。
(リャンピンじゃねぇか!)
(エ、エスペリア様……)
(トロン!? どうしてこんな所に)
そう、三つの人影とは、トロンとリャンピンとエスペリアであった。
なぜ彼女達がここにいるのかと言うと、実はムチャ達が辿り着いたこの温泉は、代々中等部第一女子寮の生徒に伝えられている秘湯であるからだ。ちなみにこの秘湯は、女子寮の屋根裏部屋にある転移の魔法陣と繋がっており、知っているものはいつでも来ることができる。
「早く入ろうよ!」
女子三人組は、先程ムチャ達が服を脱ぎ散らかした場所まで来ると、温泉に入るために服を脱ぎ始める。
男子三人組は理解した。
なぜこの温泉への道中が守られていたのか。
そして男子寮に伝わる「無限の秘宝」の正体を。
(そうか……無限の秘宝って)
そう、最高の覗きスポットの事であったのだ。
ムチャ達が今隠れている入り口近くの岩陰は、魔法照明の届かない死角となっており、更にここに来る女生徒達はまさかこんな所に覗きに来る人間がいるとは思っておらず、実に無防備であり、温泉という事で開放的でもある。
(レオ、ハリーノ)
(うん)
((秘宝はあったんだ!!))
そこには、はるばる山を登り、試練を乗り越え、固い友情で結ばれた三人の少年達、いや、
女子三人組は服を脱ぎ終わると、仲良く湯船へと向かう。獣達に覗かれているとも知らずに。
「リャンピン、あなた前くらい隠しなさいよ」
「えー、温泉では隠さないのがマナーなんだよ!」
「そうなんだ」
いや、隠した方が良いのである。
なぜなら獣達が覗いているから。
女子達は湯船に浸かり、女子トークを始める。
「へぇー、エスペリアって結構着痩せするんだぁ」
「あなたこそなかなか良いものをお持ちじゃありませんの。その綺麗な脚も羨ましいですわ」
「ふふふ、鍛えてるからねー」
二人のスタイルを見たトロンは、自分の幼児体型を確かめ、おもむろにエスペリアの胸を揉みしだく。
「きゃあ! トロンさん何しますの!?」
「ちょっとちょうだい」
「何をバカな……いやぁ!」
「あはは、トロンはまだ成長期なんだよ」
獣達はお約束を与えたもうた神に感謝した。
彼等の友情は、秘密を共有する事で更に深く結び付くであろう。人間としての格はグンと下がってしまったが。
しばらくして、温泉を堪能した女子三人は湯船からあがる。
すると、トロンが床に落ちているある物に気付いた。トロンはそれをヒョイっと拾い上げる。
「あら、トロンさん、それは何ですの?」
それは一枚の布のような物であった。
トロンはそれをジーッと見つめる。
「ムチャパンだ」
トロンは呟いた。
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