獣達の夜5

 闇の中で歩を進めながら、周りを警戒しつつも三人は色んな事を語り合った。秘宝の正体や、学園生活の事、好きな食べ物や将来の夢について。


「俺、将来はトレジャーハンターになりたいんだ」

 レオは自らの夢を語った。

 レオの実家は鍛冶屋で、レオの父親は毎日工場に篭り、ひたすら鉄を打つ寡黙な男であった。

 レオはそんな父親の事を尊敬はしていたが、自分は父親のように一箇所に籠るのではなく、もっと広い世界を見てみたいと常々考えており、父親に隠れて弓や剣の練習をしていた。

 そんな中、魔王軍が討伐され、武器の需要が減り、鍛冶屋の経営が急激に傾いた。レオは毎日帳簿とにらめっこをして頭を抱える父親を見て、夢を諦めて父親の仕事を本格的に手伝う事を決心する。

 しかし、そんなレオに、ある日父親はグリバー学園の案内を見せ、こう言った。

「これからは鍛冶屋の時代じゃねぇ。知恵と力を付けてお前の好きな事をしろ」

 レオはお金の事など色々心配ではあったが、それを言うと思いっきり殴られて「ガキがいらねぇ心配するな」と言われたので、その好意に甘えてグリバー学園に入学したのだ。

「だから俺は広い世界を見て、お宝を手に入れて金持ちになる。そして親父にもでっかい工場を作ってやるんだ」


 ムチャとハリーノはレオをただの陽気でスケべな男だと思っていたが、その話を聞いて少しだけ感心した。


 そんな話をしながら歩いていると、三人は小さな泉がある拓けた場所に出た。地図を見ると、寮から星印へ七割程進んだ所に泉が記されている。

 三人はそこで少し休憩をする事にした。

 寮を出てからすでに一時間以上経過しており、歩き通しだった三人はすっかり喉が渇いていたのだ。

 三人は泉の水を掬い、ガブガブと飲んだ。

 泉には月が映っており、それは見事な満月であった。

「ぷはぁ! うめぇ! しかし結構歩いたなぁ」

「もう半分以上来てるから、きっともうすぐだよ」

 三人が泉から顔を上げた時、背後から声が聞こえた。

「レオ!」

「ハリーノ!」

 それは男性と女性の声で、三人が振り返ると、そこには中年の男と女が立っていた。

「誰だ!?」

 ムチャは立ち上がり剣を抜く。

 しかし、レオとハリーノはあんぐりと口を開けてその場から微動だにしない。

「親父」

「母さん」

 彼等はレオの父親とハリーノの母親だったのだ。

「え? えぇ?」

 ムチャは驚き、彼等と友人達を交互に見比べた。

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