獣達の夜4

 ムチャとレオは次々と襲いくるゴーレムを、それぞれの武器を振るい崩していった。幸いな事にゴーレムは弱く、殆どは一刀で倒れてゆく。しかし、いかんせんその数は多く、十数体を倒したのにも関わらず、ゴーレム達は木々の奥から次々と現れる。

「キリがねぇな! どこかにこいつらを作っている魔法使いがいるのか!?」

 ムチャは二十体目のゴーレムを両断した。

「いや、この辺りに僕達以外の人間は感知できない」

 ハリーノは二人に守られながら、探知の魔法でゴーレム達の出所を探っている。そしてある事に気がついた。

「わかった! レオ、ダガーを貸して!」

 ハリーノはレオからダガーを一本受け取ると、ゴーレム達の合間をすり抜けて、木々の奥にある一本の大きな木へと走る。そして木の後ろ側に回ると、木のの中に手を突っ込んだ。

 すると、ゴーレム達の動きがピタリと止まり、ボロボロと崩れ始めた。

「ふー、助かったぁ」

 レオはダガーを腰のベルトにしまい、額の汗を拭う。そこにハリーノが戻ってきた。

「ハリーノ、何やったんだ?」

「それはね。ちょっと来て」

 ハリーノはレオにダガーを返すと、手招きして二人を先ほど手を突っ込んだ木のうろへと連れてくる。


 そしてうろの中をちょいちょいと指差した。

「これは、魔法陣か?」

 ムチャが中を覗くと、そこには魔法陣が描かれており、魔法陣の中心にはハリーノがつけたダガーの傷がある。それにより魔法陣は効力を失ったのだ。

「探知の魔法で調べても辺りに誰もいないのに、ここに魔力の反応だけがあってピンときたんだ。誰かがここに魔法陣を描いたんだよ。複雑で僕にもよくわからないけど、人間がこの辺りに近づいたら自動的にゴーレムを生み出す魔法陣をね。ゴーレムは地中に埋められた動物達の骨を核にしていた。だから無限に出てきたんだよ。ゴーレムの自動作成なんてこれはかなり高度な魔法だよ」

 ハリーノは感心したように、うろに描かれた魔法陣を眺める。


「なるほどなぁ、でも誰が何のためにこんな魔法陣を描いたんだろうな」

 ムチャが首をかしげると、レオがニヤリと笑みを浮かべた。

「そりゃあアレだろ、秘宝を守るためさ!」

 普通であれば、ただの山に侵入者を排除するかのような魔法陣を配置したりはしない。つまりこの山には何かがあるという事である。その何かとは、おそらく男子寮に伝わる「秘宝」に他ならないであろう。

「僕、正直先輩の冗談かと思っていたけど、何だかワクワクしてきたよ」

「俺も! トレジャーハンター希望としては絶対に秘宝が見たくなったぜ!」

「よし、じゃあ行こう!」

 秘宝が存在する事を確信し、三人は再び歩き出す。

 果たして秘宝の正体とは何なのであろうか。

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