雨降ってなんとやら
「う、ううん……」
エスペリアが意識を取り戻した時、後頭部に何か柔らな感触を感じた。目を開けると、そこにはエスペリアの顔を覗き込むトロンの顔がある。
どうやらエスペリアはトロンに膝枕をされていたようだ。
「ごめん、ちょっとやりすぎちゃった。大丈夫?」
エスペリアの顔を覗き込むトロンの顔は心配そうな表情を浮かべている。
エスペリアが辺りを見渡すと、取り巻き達がモップで床をゴシゴシと掃除していた。そしてエスペリアが目を覚ましたのを見て、取り巻き達はモップを放り出してエスペリアに駆け寄ってくる。
エスペリア様!
大丈夫ですか?
頭を打っていませんか?
ボーッとしていたエスペリアは、彼女達の声と、鼻に残る臭いにハッとして跳ね起きた。
「あ、あなた達……いや……私は……」
そして先程の醜態と敗北を思い出し、顔を青くする。
「あ、いや……いやぁ!!」
エスペリアは叫び声をあげたかと思うと、床にへたり込み、メソメソと泣きはじめた。
「あんな醜態を晒しては、もう学園にはいられませんわ!!!!」
取り巻き達の前でゲ◯を吐き、敗北し、挙げ句の果てに敵であるトロンに介抱までされてしまったのだ。それはこれまで女王として振舞ってきたプライドの高いエスペリアにとって、最大級の恥と屈辱であった。
ボロボロと涙を流すエスペリアを見て、トロンと取り巻き達は顔を見合わせる。そしてトロンはエスペリアにハンカチを差し出した。しかし、そのハンカチは、気絶して自らのゲ◯に倒れこんだエスペリアの顔と服を拭ったハンカチであったために◯ロにまみれていた。
「くさっ!」
エスペリアはトロンの手をピシャリと払う。
「同情なんていらないわよ!!」
ハンカチは宙を舞い、掃除したばかりの床にベシャリと落ちた。
エスペリアはキッとトロンを睨みつけ、叫ぶ。
「私をあんな目に合わせたりして、覚えていなさいよ! 絶対に許さないんだから! あなたなんて! あなたなんて……」
ふと、ヒステリックに叫ぶエスペリアの声が止まった。エスペリアの視線は、トロンのローブへと向けられている。
トロンのまだ真新しいピカピカのローブは、所々エスペリアの◯◯が付着して汚れていた。それなのにトロンは嫌な顔一つしていない。
「あなた……どうして……」
エスペリアがトロンの顔を見ると、トロンは小さく微笑む。
「だって、友達だから」
トロンの言葉にエスペリアは首をブンブンと横に振る。
「私はあなたを友達だなんて言ったことありませんわ! それに、私はあなたに酷いことを沢山……」
今度はトロンが首を横に振る。
「でも、初めて会った日にお茶に誘ってくれたでしょ」
トロンはエスペリアに歩み寄り、そっと手を差し伸べた。
エスペリアはトロンの手を取り、また泣いた。
なぜか取り巻き達まで泣いていた。
ぷふっ
そんな中、一人の取り巻きが噴き出した。
エスペリアと取り巻き達は泣きながら彼女をジトッと睨みつける。
「ご、ごめんなさい、私こういう空気に弱くて……ふふふっ」
ゲラもゲロも程々でなければならない。トロンはそう思った。
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