初日3
その後、ムチャとトロンはホームルームの時間に教室の前で皆に簡単な自己紹介をし、午前中の間は大人しく教室で授業を受けた。
トロンは寺院で魔法の修行の他に、ある程度のレベルまで算術や歴史の教育を受けていたために、問題なく授業を受けられたのだが、ムチャの方はケンセイに簡単な算術と読み書きくらいしか習っていなかったので、教師に「答えてみろ」と言われた時に少々恥をかいた。しかし、ムチャは恥をかく事に慣れているのと、学ぶ事が好きだったので、友人や教師にバンバン質問を投げかけて、次々と知識を吸収する。そして時にはおどけたり冗談を言って、クラスの皆を笑わせたりもした。トロンは授業が退屈で、半分くらいは寝ていた。
そして午後になり、クラスメイト達と昼食を食べたムチャは武術学科の専用校舎に移動する。食堂を出る時、魔法学科のハリーノは「僕はこっちだから」と言って別れた。
魔法学科の校舎から少し離れた武術学科の校舎に入ると、そこには広大な武道場があり、レオの話によると二階や三階にも同じような施設があるとの事であった。二人は更衣室で運動着に着替えて、外にある運動場へ出る。更衣室を出る際にレオは、「今度女子更衣室の覗きスポットを教えてやる」と言い、「ただ、武術学科の女子は強いから、バレたら殺されるけど」と言って腕まくりをして、刃物で刺されたような大きな傷口を見せてくれた。
運動場には同学年の武術学科の生徒達がズラリと並び、百人以上の生徒達がストレッチやおしゃべりをしていた。その中にはリャンピンの姿もあり、ムチャと目が合ったリャンピンは小さく手を振った。
授業の内容自体はムチャにとっては退屈で、ストレッチや筋力トレーニング、走り込みやアスレチック走をムチャは淡々とこなす。ムチャの身体能力の高さに、武術学科の生徒達は皆驚いていた。
走り込みの時に、トップを走るムチャにリャンピンが声をかける。
「ムチャ君凄いね、ここに来る前何かやってたの?」
リャンピンの問いに、ムチャは親指を立てて答えた。
「あぁ、芸人をやってたんだ」
ムチャの返答に、リャンピンは唖然としていた。
しかし、その後の近接格闘の授業ではムチャがリャンピンに驚かされる事になる。
「ハイー!! ハイハイハイー!!」
リャンピンは次々とかかってくる自分よりもガタイの良い男子生徒達を、威勢良い掛け声と共に見たことも無い武術で次々と吹き飛ばしてゆくのだ。
「すっげぇ……」
ムチャはリャンピンの強さに目を丸くしながら、寝技に持ち込んだ相手をくすぐりまくって教師に怒られた。
それから投擲武器や弓の授業が行われる。
こちらの方は普段剣しか使わないムチャはさっぱりであった。あまりに的に当たらなすぎて、感情術を使おうかと思ったほどだ。逆にレオはこちらが得意分野らしく、ナイフ投げや弓矢で次々と的の中心に的中させていた。
レオは的を外しまくるムチャに「いいか、矢は弓で撃つんじゃねぇ……心で打つんだ」とドヤ顔で語る。
ムチャはちょっとだけウザいなぁと思った。
そして最後に近接武器の授業となった。
まずは皆それぞれの得意な武器を持ち、各自三十分程素振りや型の練習をする。生徒達が手にする武器は剣が多かったが、中には斧や槍、レオのようにナイフを持つものもいて、リャンピンは「ヌンチャク」という見た事があるような無いような武具をビュンビュンと凄いスピードで振り回していた。
それから実戦訓練へと移る。
実戦訓練は、大怪我をしてはいけないので、皆全身に防具を着けて、木製や竹製の武器に持ち替えての訓練となる。
ムチャは入れ替わり立ち替わり生徒達と剣を交えたが、ムチャに敵う者は誰も居なかった。何名かはムチャに食らいつく者もいたが、実戦で鍛えたムチャのトリッキーな剣技に翻弄され、皆地につけられたのであった。
訓練の後、リャンピンがハァハァと興奮した様子で、「明日は私とやりましょう」と言ってきたのがちょっとだけ怖かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます