初日

 ムチャはレオとハリーノに連れられて、昨日入学の手続きをした校舎の前にやってきた。


「あれ? 武術学科はあっちの建物じゃないのか?」

 ムチャが少し離れた建物を指差すと、レオはひらひらと手を横に振る。

「専門学科の授業は昼からだ。午前中はこっちの校舎で共同で授業受けるんだよ。分けられているクラスも武術と魔術ごちゃ混ぜだ」

 ムチャはなるほどと納得し、校舎の中に入り職員室へと向かう。ムチャが職員室にて教員に告げられたクラスは、レオやハリーノと同じクラスであった。

 グリバー学園の中等部は各学年三十人毎に十クラス前後に分けられており、ムチャとレオとハリーノはその第七組だそうだ。


「因みに一組と二組は特待生や貴族の御子息が集まっているクラスで、特クラって呼ばれているんだよ」

「さっきのリャンピンは武術学科の特待生で東方武術の名門の娘だ。お前のハニーのトロンって子はどこのクラスに入るのかわからねぇけどな」


 三人は八階建ての校舎の三階まで上る。そこが二年生のフロアであるらしい。

 だだっ広いフロアには、ムチャと同じローブを着た同年代らしき少年少女達で溢れており、ムチャはかつてサキュバスのケセラに見せられた夢を思い出した。フロアの中心は吹き抜けになっており、そこを杖に跨った少年少女達が昇ったり降りたりしている。

「はぇー、すっげぇな」

 沢山の少年少女達を見て、ムチャは今すぐ客寄せをしてネタを始めたい衝動に駆られたが、相方のトロンがいないうえに、ここはお祭り会場や街の広場ではないのでグッと我慢すした。

 そしてムチャは二人に連れられて、七組と書いてあるプレートの掛かった教室へと入った。


 教室に入ったムチャが中を見渡すと、中には机とイスがズラリと並んでおり、教室の各所では生徒達が固まって仲良さげに話をしている。そして、レオが「おーい、転校生だぞー!」と言うと、生徒達は一斉にムチャの周りに集まり、あっという間に人だかりができた。


 名前なんて言うの!?

 どっから来たの!?

 ゴーレム制作部に入らない!?


 生徒達に次々と質問責めにされてムチャは戸惑ったが、そんなに悪い気はしなかった。

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