入学
「わぁ、ムチャ、見て見て」
「でっかいなぁ」
門をくぐり、馬車を降りた二人の目に入ったのは、まるで城のように大きな建物であった。純白の建物はあちこちに装飾が施され、まるで城のように立派な造りだ。
少し離れた所にも、似たような建物がいくつか建っているのが見える。
二人が馬車から荷物を降ろしていると、建物入り口から出てきた小綺麗な老婆が二人に声をかけた。
「あなた達、ムチャ君とトロンさんね?」
二人は頷き、老婆にペコリと頭を下げる。
「ナスーナ地方からの長旅お疲れ様、マニラさんからお話は聞いているわ。私はグリバー学園教頭のベロ・ベローバです」
「ベロベロバー?」
「ベローバです。グリバー学園にようこそ。事務所で入学手続きをしたら寮まで案内するわ」
二人はベローバに連れられて校舎の中に入り、辺りをキョロキョロと見渡しながら廊下を進む。
校舎の中も建物の外装に劣らず綺麗であり、二人はなんだか落ち着かなかった。
「ここは第一校舎で、一階には職員室や会議室や食堂、二階から上は魔法学部初等部から高等部までの教室があるわ。トロンさんが通う所ね」
「え? トロンだけ?」
「あなたは武術学科へ入学する事になっているわ。武術科は隣の第二校舎よ」
ムチャは少し離れた所にも似たような建物が建っていた事を思い出した。どうやらそちらの建物の方がムチャの通う武術科の校舎であるらしい。
「えぇ!? 違う校舎に通うのかよ!」
「席に空きが無かったのよ。それにあなた魔法は使えるの?」
「いや、使えない。学校って一から教えてくれるんだろ?」
「うーん、それなら初等部に空きがあるけど」
その時、廊下を歩く三人の横を、カバンを斜めにかけ、ローブを着た小さな子供達が通り過ぎた。子供達はすれ違い際にベローバへと会釈をし、挨拶をする。品の良さげな子供達だ。
「教頭先生こんにちは!」
「はい、こんにちはぁ」
ベローバはニコニコと笑みを浮かべて子供達に挨拶を返す。
「あれは?」
「初等部の生徒達よ」
ムチャは、去って行く子供達の背中をジッと見つめた。そして小さな子供達に囲まれて魔法のお勉強をしている自分を思い浮かべる。
「俺、武術学科でいいです。体動かすの好きだし、うん」
「そう、なら良かったわ」
ベローバは穏やかに微笑んだ。
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