ムチャとトロンの暇つぶし2

「へぇー、すげぇな」

 ムチャはいつもより高い声でそう言って、伸びた髪を鬱陶しげにかき上げる。

「ムチャ可愛くなったね」

「トロンこそ、男前になったな」

 トロンはドヤ顔で腕まくりをし、グッと力こぶを作ってみせた。

「ムチャは「ムチャ」って言うより「チャム」って感じだね」

「じゃあトロンは……トロスなんてどうだ?」

「おー、男っぽい」

 二人はあれやこれやと異性になった相方の名前を出し合ったが、結局最初に出た案に落ち着いた。


「では早速……」

 ムチャが呟き、自らの胸に出現した二つの膨らみに手を伸ばそうとすると、トロンが素早くムチャの腕を掴んだ。

「ムチャ、何してるの?」

「え? いや、ちょっと……」

 ムチャはふっくらと膨らんだ自らの胸に視線を落とす。

「ちょっと何?」

「気になるじゃん?」

「やめて」

「自分のだしいいじゃん」

「いや、ダメでしょ」

 構わずにわきわきと指を動かすムチャの手を、トロンは更に強く握りしめる。するとムチャは、女の子らしく痛そうに顔をしかめた。

「と、トロン、手ぇ痛いよ……」

「あ、ごめん」

 ムチャの表情に、トロンはなぜかドキッとしてしまい、慌ててムチャの手を離す。すると。

「なんちゃって」


 ムニュッ


 次の瞬間、ムチャは自らの胸をムニムニと揉みしだいていた。ムチャは演技力は無いのに悪知恵は効くのだ。

 ムチャは自らの胸を揉みながら笑った。

「ははは、これトロンより大……きぶっ!!」

 ムチャの頬にトロンのビンタが飛んでいた。

「酷いっ! 女の子の顔に手をあげるなんて!」

「うるさい、このスケベタヌキ」

 トロンはひっくり返ったムチャのお尻をペンペンと叩く。

「いやん! いやん!」

 すると、トロンの平手がムチャのお尻に何度か触れた時、トロンの手がピタリと止まった。

「トロン?」

 トロンはジッとムチャのお尻を見つめている。

 そしてムニムニと揉んだ。

「いやん!」

 今度のいやんは本気のいやんであった。

「あ、ごめん」

「と、トロン、何するんだよ!?」

 ムチャはトロンの手から逃れ、サッとお尻を隠す。

「何か……急にお尻が揉みたくなって」

「はぁ?」

 トロンはゴクリと息を飲み、真剣な表情でムチャに近付く。

「ねぇ、ちょっとこっちきて」

「え、い、イヤだよ」

 ムチャは怯えながら荷台の隅へと後ずさった。

「私どうしたんだろう。なんだろうこの気持ち」

「と、トロン、ダメだ、寄るんじゃない!!」

 トロンの中に何やら得体の知れぬムラムラが湧き上がる。それは男が普段理性というもので全力で制御しているものであった。


 トロンの目の前にいるムチャ、いや、チャムの体はまだ幼さが残るものの、胸の膨らみはくっきりしており、腰のラインは滑らかにカーブし、ふっくらとしたお尻へと鮮やかなラインを描いている。トロンもといトロスはそれを「美味しそう」だと思ってしまった。

 目の前の鉄板で焼かれる若牛のひき肉を使ったハンバーグのように、チャムの姿はトロスの本能を刺激する。トロスはいわゆる「一口ちょうだい」状態なのだ。

 一方チャムは、目の前にいる自分よりがっしりとした体つきの異性が、手をわきわきとさせながら迫り来る事実に怯えていた。先程のビンタで、チャムは肉弾戦ではチャムに敵わないと本能的に察してしまったのだ。まるでカリンと対峙した時のように、チャムの体は固く硬直してしまう。いや、もっと怖いのはその目である。トロスの目にはチャムの心では無く、肉体のみが映っている事がありありと見て取れた。まるで餌を前にした狼のように。

「い、イヤ、ダメだ……」

 チャムの貞操のピンチであった。

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