ムチャとトロンの暇つぶし

 この一週間で、二人はトランプや一発ギャグしりとり、魔物カードのトレードなどの、思いつく限りの暇つぶしをやり尽くした。

 退屈に耐えかねたムチャはふと思い出す。

「そうだ。前に街の露店で魔法商人から買ったアレを試してみないか?」

「アレ?」

 ムチャはカバンをガサガサと漁り、一つの小さなビンを取り出す。ビンの中には青と赤の錠剤が幾つか入っており、ビンのラベルには「セイベツイレカワール」とポップな文字で書かれていた。

 店主の話によると、これは名前の通り男と女を入れ替える薬であるらしい。説明を聞いたムチャは、少し値は張ったが「面白そう」という理由でこれを購入したのであった。

「そういえばそんなのあったね」

「ちょっと飲んでみようぜ」

 そう言ってムチャはビンに書かれている注意書きを読み始めた。

「えーと……青を飲めば男に、赤を飲めば女になります。自分の性別と同じ色の錠剤を飲んでも効果はありません。一錠で効果は一時間、二錠で効果は三時間。よし、三時間くらいなら特に問題は無いな」

 ムチャは青と赤の錠剤を二錠ずつ取り出し、トロンには青の錠剤を差し出す。

「え? 私も飲むの?」

「当たり前だろ。ほら」

「うーん……まぁ、いいか」

 トロンはムチャの手から錠剤を受け取る。

「じゃあ、せーので飲むぞ」

「うん」

「せーの!」

 二人は同時に錠剤を口に放り込んだ。


 ゴクン


 二人は錠剤を飲み込み、効果が出るのを待った。

 しかし、一分ほど待っても一向に効果が現れない。

「あれ? 何も起こらないぞ」

「錠剤だから溶けるのに時間がかかるのかもね」

「なるほどな。ってあれ? トロン、声どうした?」

 トロンの口から出る声が、いつものポヤンとした声からどことなく少年を思わせる声に変わっていた。

「ムチャこそ」

 ムチャの声も、いつものやんちゃ坊主を思わせる声から、おてんばな女の子のような声に変わっていた。

「おぉ! きたきたきたきた!」

「うわぁ、変なの」

 そして、二人の体つきも徐々に変わり始めた。

 トロンの髪が徐々に短くなり、柔らかそうな体つきが徐々に筋肉質で骨格がわかりやすい体型に変わってゆく。顔もプニプニした頬がややシャープになり、目元も凛々しくなった。

 反対にムチャは髪が伸び、胸やお尻が膨らみ、体全体がふっくらとしてくる。そしてつり目がパッチリとした印象に変わり、頬に赤みが出て、肌にはツヤが出てきた。

「と、トロンが男になった!?」

「ムチャが女の子に……」

 こうして、面白半分で二人は異性へと変身を果たしたのであった。

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