クリバー学園の冒険
旅路
「仕方ねぇ! トロン、合体だ!」
ムチャの掛け声で、トロンがムチャの背中におぶさる。そしてトロンの魔法により周囲の土が二人の周りに集まり、包み込むように巨大な鎧のような姿を型作った。
二人が内部から操縦する土の巨人は、地響きをあげて立ち上がり、一歩前に踏み出してポーズを決める。
「笑撃合体・ムチャトロン!!」
かつてアレル闘技場を震撼させたあの巨人が再び姿を現したのだ。
「いくぞムチャトロン! フルパワーだ!」
「ムチャ、程々でお願い」
「はい。じゃあ、押しまーす」
ムチャトロンの緊急発進は、ぬかるみにはまった馬車を後ろから押すためであった。
アレルから旅立ち、既に一週間が過ぎていた。
馬車は順調に進み、アレルから南西に数百キロ、シットリン平原へと入っている。
「しかし、暇だなぁ。おっさん、目的地まであとどれくらいなんだ?」
ムチャは馬の手綱を握る御者に問いかけた。
「そうだなぁ、あと一週間くらいかな」
「一週間かぁ、長いなぁ」
ムチャは呟き、馬車の荷台にゴロンと寝転がる。
トロンもムチャに習い、ムチャの隣にゴロンと寝転がった。
「俺達の足どりを消すって言ってもさぁ、そのうち俺達世界一の芸人になるわけだろ?」
「そのうちね」
「じゃあ、いずれ逃げも隠れもできない立場になるわけじゃん?」
「そのうちね」
「となると、いつまでもこそこそしてるわけにもいかないし、いずれはトロンを狙ってる奴ともケリをつけなきゃいけないな」
「うーん……そのうちね」
命を狙われる身でありながらも、二人は呑気であった。
二人の見上げる空を、トンビがピーヒョロヒョロと飛んでいる。
「ヒマッチョ」
突然、トロンが呟く。
「トロン殿、それはなんでござるか?」
ムチャは以前会った東から来た旅人の口調を真似て聞いた。
「暇なときに使うギャグ。ヒマッチョ」
「なるほど。俺もヒマッチョ。超ヒマッチョ」
「ヒマッチョドラゴン」
「強そう」
「エンシェントホーリーヒマッチョドラゴン」
「めっちゃ強そう」
「ヒマッチョのソテー」
「美味しそう」
「若鶏のソテー、ヒマッチョ添え」
「めっちゃ美味しそう」
御者は背後から止めどなく聞こえてくるヒマッチョにげんなりしながら馬車を走らせ続ける。
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