それから

 あの色々あったライブの日から、三日が過ぎた。

 ライブの翌日、ムチャとトロンはライブの遅行の事で関係者各位に頭を下げて回ったが、ちゃんと事情を話したら二人の事を責める者は誰もいなかった。どうやら支配人が裏で話を通してくれたらしい。


 ミモルや他の患者達は医師団の治療によりウイルスの除去に成功し、すぐにでも退院できる程に回復した。ムチャとトロンはミモルと約束した通り、病院でチャリティーライブを行い、多くの患者達を喜ばせた。

 医師団によると、あの日なぜ急にミモル達が苦しみ始めたかを分析した結果、ウイルスの元であるイルマが街に接近した事により、ミモル達の体内にいるウイルスが興奮して暴れたせいであるらしい。要は全部イルマが悪いのだ。二人はイルマをいつか絶対ボコると心に誓った。しかし、なぜ人間であるイルマが新生魔王軍に所属しているのかなど、新たな謎も生まれたが、それは一介の芸人である二人には関係の無い話である。イルマについては医者であり街でもそこそこの権力を持つソドルが王国軍に話を通してくれる事になった。


 しかし、二人にも関係のある問題が一つあった。

「あなた達、暗殺者に命を狙われる立場だったの?」

 ライブの打ち上げの時に、例の黒尽くめの集団についてカリンに問われたので、ムチャとトロンはカクカクシカジカと二人のこれまでの事を話した。

「あっはっは! あんた達、エキサイティングな旅をしてるんだね」

「カリン、笑い事じゃないだろう。弟弟子とその相方が命を狙われてるなんて」

 カリンは爆笑していたが、他の者達はどうやら二人のこれからの旅路が心配なようだ。

「あなた達、これからどうするの?」

 マニラに問われ、ムチャは答える。

「この街にいたらまたあいつらがやってくるかもしれないから、近いうちに旅立つよ」

 それを聞いてナップが喚く。

「だから巫女様が寺院に戻れば奴らも簡単には手を出せぬと……!」

「絶対イヤ」

「大体寺院にいたら居場所がバレてるんだから余計狙われるだろ」

「しかし、今回のライブでお前たちは少し目立ち過ぎたぞ。この辺りを旅していてはまたすぐに襲われるのではないか?」

「うーん……そうかもな。だからどっか遠くへ行くよ。もっと南下するか、王都に向かってずっと西に」

 二人が旅立つと聞いて、その場にいた皆は少し寂しげな表情を浮かべた。

 すると、マニラが思いついたように一つの提案をした。

「ねぇ、あなた達の足取りを消せる場所知ってるから、しばらくそこに滞在してみたら?」

「え? そんな場所あるの?」

「任せなさい! あなた達にぴったりな所よ」

 マニラの目が久々にギラリと輝いた。

 こうして、二人の次の行き先が決まった。


 二人はこれまでお世話になった人々に挨拶をしたり、カリンの家に遊びに行ったりと、やり残した事をテキパキと済ませ、旅の支度を整えた。


 そして、旅立ちの日がやってくる。

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