ライブの日2

 ムチャとトロンが病院に到着すると、病院の中はなんだか慌ただしかった。廊下を医者や看護師達がドタバタと走り回っている。二人がミモルの病室に向かうと、病室の前ではゴドラとコモラ、そしてゴドラの奥さんが神妙な顔をして病室の前に立っていた。

 ムチャはコモラに声をかける。

「なぁ、何かあったのか?」

 ムチャが問うと、コモラが顔を上げた。ゴドラとその奥さんも二人を見る。三人の目は僅かに潤んでいた。

「ミモルが……」

 コモラが呟く。

 その時、ミモルの病室のドアが開き、中からソドルが出てきた。

「ゴドラ、容態が安定しない。このままではミモルちゃんは……」

「どうにかならないのか?」

「現状我々では手の施しようが無い」

 ムチャはソドルに聞いた。

「ミモルの調子が悪いのか?」

「君達も来ていたのか。今朝から急にミモルちゃんが苦しみだしてね。いや、ミモルちゃんだけじゃない。ミモルちゃんと同じ魔法ウイルスに感染している患者が皆、今朝から一斉に苦しみ始めたんだ」

「まじかよ! 王都の医師団はどうしたんだ!?」

「それが、何かトラブルがあったのかまだ到着していないんだ。昨日隣の町から出立したと連絡もあったし、もうとっくに到着していてもおかしくないのだが……」

 それを聞いてムチャとトロンは顔を見合わせる。

「医師団は街のどっちから来るんだ?」

「バトムの町から来る予定だから東の街道から……まさかムチャ君」

「迎えに行く。トロンは残っていてくれ」

 トロンはコクリと頷いた。

「待て! 君達は今日ライブが……」

 ソドルがそう言った時にはムチャはもう駆け出していた。ゴドラ一家とソドルは階段を飛び降りるムチャの背中を見守るしかできなかった。

 ソドルが残されたトロンに何か言おうとすると、先にトロンが口を開いた。

「ソドルさん。私治療はできないけど、案があるの」

「案? なんだね?」

 トロンはソドルに耳打ちをすると、ソドルは驚きの表情を浮かべる。

「そんな事ができるのか?」

 トロンは頷き、そして言った。

「ウイルスに感染している人達をみんな同じ病室に集めて」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る