ミスコンテスト7

 全ての特技披露が終わり、ミスコンテストはいよいよ投票に移る。投票は入場時に配られていた魔力の込められた投票用紙を握って、投票したい参加者の事を念じると、投票用紙が自らステージ上に設置されているエントリーナンバーの付いた投票箱まで飛んで行き、投票されるというシステムである。

「ポロロは誰に入れるんだ?」

 ムチャが投票用紙をペラペラさせながらポロロに尋ねた。

「僕はトロンさんに入れるよ。歌、面白かったよ」

 歌が面白いとは褒め言葉なのかどうなのかはわからないが、ポロロが手にした投票用紙はフワリと舞い上がると、十四とナンバーが刻まれたトロンの投票箱へと飛んで行った。ちなみにギャロはカリンに投票した。ギャロ曰く「人妻の色気が良いな」だそうだ。


「貴様は誰に入れるのだ?」

 ムチャとポロロの間にナップが割り込んできた。

「そりゃあトロンだよ。ナップこそ誰に入れるんだ? お前の相方失格なっちゃったじゃん」

「フン、私の答えはこうだ」

 ナップは投票用紙をクシャクシャに丸め、ポイと投げ捨てた。

「フロナディア様以外に投票するのは不義理に当たるからな」

 ナップはキメ顔でそう言ったが、投げ捨てた投票用紙は空中でハラリと開き、ヨロヨロとトロンの投票箱へと飛んで行った。

「……」

「……おい、ナップ」

「……」

 念じただけで投票できるのは便利であるが、投票者の気持ちに素直に反応し過ぎてしまうのはデメリットかもしれない。


 数多の投票用紙が闘技場の上空を舞い、次々と各投票箱へと吸い込まれてゆく。しばらくして、最後の投票用紙が投票箱に吸い込まれた。

 ムチャが見ている限りでは、トロンの投票箱にも結構な数の投票用紙が吸い込まれたように見えた。しかし数えていたわけではないので、どれだけの票が集まったのかはわからない。


「それでは、投票と集計が終わったようなので、結果発表に移りたいと思います! 参加者の皆様、今一度ステージにお並び下さい!」

 司会者がそう言うと、参加者達がゾロゾロとステージ上の投票箱の後ろへと並んだ。すると、いかにもなドラムロールがドロドロと流れ始める。

「第九回、アレル闘技場ミスコンテストの優勝者は……」

 最初は何気なくミスコンを見ていたムチャであったが、急に緊張が湧き上がりゴクリと唾を飲んだ。

 ドラムロールがピタリと止まる。


「最強の妻! カリン!」


 カリンの目の前にある投票箱が爆発し、投票用紙が花吹雪になって舞い散る。そして観客達から大きな歓声と拍手が起こった。

 カリンは「よしっ!」とガッツポーズをし、観客達に大きく手を振った。


「くあー、ダメかぁ!」

 ムチャは残念そうに天を仰ぐ。対照的に舞台上のトロンはにこやかに微笑みながらカリンにパチパチと拍手を送っていた。

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