ミスコンテスト5

「えー、さすがはお笑いコンビの片割れですね。奇抜なボケを見せてくれました! さて、続きましては特技披露のお時間となります! 参加者の皆さんはどのような特技を見せてくれるのでしょうか!?」


 特技披露、ミスコンテストの中では参加者達の個性が一番出る見所のあるコーナーだとは思うが、先程から存分に個性を披露しているトロンは何をしでかすのであろうか。見守っているムチャの胃がキュッと痛みを覚えた。

(トロンの奴何をする気だ……一発ギャグか? ショートコントか? それとも……)

 それは神のみぞ知るところである。

 ムチャがトロンと旅をし始めてしばらく経つが、正直トロンの行動はムチャにも読めないところがある。


 特技披露が始まり、参加者達の歌やダンスや武術の型など無難な特技披露が続く中、ナップがムチャの肩を叩いた。

「おい、巫女様は何をするのだ?」

「だから知らねぇよ。そっちの相方こそ何をやるんだよ」

「知らん」

 彼らは互いに相方の事をイマイチ理解していない男達であった。

 ちなみに、プレグはいつも前座でやっている魔法ジャグリングを披露し、ニパはアクロバットを披露するかと思いきや、トロンの影響なのかお笑い魂に火がついて、プレグのモノマネをしている途中で舞台袖から猛烈な勢いで飛び出してきたプレグにゲンコツを喰らい、舞台袖まで引き摺られていった。

 そしてカリンは、リンゴを空中に放り投げ、目に見えぬほどの槍さばきでリンゴをウサギさんにするという神技をやってのけた。これは武道家としても主婦としても良いアピールとなり、観客達の反応もかなり良かった。

 そしてフロナディアの番となる。

「フロナディア様はダンスがお得意だからきっとそれを披露するだろう」

 ナップはそう思っていたが、その期待は大きく裏切られた。


「さて、フロナディアさんは何を披露してくださるのでしょうか?」

「私は動物が好きなのですが、その中でも特に馬が大好きなんですの」

「ほー、馬がお好きですか。お嬢様らしくて良いですね。では乗馬とかもされるのですか?」

「はい、乗馬は大の得意ですの。今からお見せします」

「え? 今から?」

 司会者の頭上にハテナマークが浮かぶ。

 するとフロナディアは指をパクっと咥え、見事な指笛を高らかに響かせた。

 そして数秒後。


 ドゴォォォォン!!


 闘技場の観客席入り口を何者かが蹴り破った。

 白い鬣をなびかせる何者かは、観客席の通路を素早く駆け抜け、華麗にジャンプするとステージ上に降り立つ。フロナディアはシャンデリアの顔を愛おしげに撫でた。

「よーしよしよし。こちら愛馬のシャンデリアですの。では、今からこの子と一緒に乗馬を披露……」


 フロナディアはその場で失格となり、係員に連れられてシャンデリアと一緒にしょんぼりとしながらステージを降ろされた。


「お前の相方も大概だな」

「お前に言われたくはない……」

 ナップは少し悔しかったが、その通りなので強く反論はできなかった。


 そしていよいよ白馬ではなくダークホースが舞台に上がる。

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