ミスコンテスト4
続いて始まったのは自己PRであった。
エントリー順に一人ずつステージに上がり、それぞれの意気込みなどを話してゆくのだが、参加者達は優勝にはあまり執着は無いらしく、「来年は試合で全勝してみせる!」とか「来週から新メニュー始まりますので、皆さん来て下さいね」とか、ただのフリートークのような様相であった。
ニパなどはとくに話すことが浮かばずに「えっとねー」を連呼していると、会場からはガンバレコールが起こった。
まともだったのはプレグくらいであったが、他の参加者のライトな自己PRに比べて気合いが入りすぎていて、正直かなり浮いていた。
観客達の反応が一番良かったのは意外にもフロナディアで、「アレルには初めて来ましたが、この街はとても素敵な街で……」から始まったお嬢様トークで、会場全体をのほほんと和ませた。
そしていよいよトロンの番がきた。
「おい、巫女様は大丈夫なんだろうな?」
「俺が知るかよ」
会場全体としては次はトロンが何をやらかすのか面白半分でワクワクしていたが、ムチャやナップは正直ヒヤヒヤしていた。
司会者に呼ばれて舞台袖からトロンが出てくる。
その姿を見た観客達がにわかにざわめきだした。
なんと、トロンは頭に包帯を巻き、布で左腕を吊って、右手で松葉杖をつきながら登場したのだ。
司会者はなんと言えば良いのかわからず唖然としている。
ひょこひょこと歩き、舞台中央に立ったトロンがポツリと言った。
「馬車に轢かれて、全治三ヶ月」
会場中がシーンと静まり返り、ムチャは壮絶な滑りの気配を感じてブワッと額から冷や汗を流した。
トロンはなぜかステージの上で「痛いよー、苦しいよー」と悶え続けている。
ムチャはワケがわからず冷や汗を滝のように流しながら脳みそを回転させた。
「なんだあれは、何のPRなんだ?」
ナップの言葉を聞いてムチャは閃く。
そして叫んだ。
「そっちの事故じゃねぇよ!!」
そう、トロンは自己PRと事故PRをかけてボケていたのだ。
ムチャのツッコミのおかげで会場からはやや笑いが起こり、なんとか大事故は防がれた。
トロンはその後「今度ライブやるから来て下さい」と言うと、松葉杖をつきながら舞台袖に戻っていった。
「よくやったぞムチャ」
「あいつの手綱は俺にしか握れないぜ」
ムチャとナップはなぜか握手を交わした。
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